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ストレスチェック実施企業では、どの調査票を使用している?~近年の傾向は?~

ストレスチェック実施企業では、どの調査票を使用している?~近年の傾向は?~

最終更新日 2023-01-10

50名以上の事業場で実施が義務づけられているストレスチェック。
ストレスチェックで使用される調査票にはどのような決まりがあるかご存じでしょうか?
23項目版、57項目版、80項目版がありますが、「何が違うの?」「どれを選んだらいいんだろう?」と疑問をお持ちの方もいるかもしれません。
そこで、今回は、ストレスチェックの調査票について、質問内容や設問数の違いを詳しくお伝えします。

ストレスチェックの調査票の基準はどう決められている?

ストレスチェックで使用される調査票について、定められていることはあるのでしょうか。
ストレスチェックで使用される調査票は、以下の3つの項目を含んでいれば、実施者の意見と衛生委員会等での調査審議を踏まえて、事業者の判断により選択できます。

① <仕事のストレス要因>
職場における当該労働者の心理的な負担の原因に関する項目
② <心身のストレス反応>
心理的な負担による心身の自覚症状に関する項目
③<周囲のサポート>
職場における他の労働者による当該労働者への支援に関する項目

これらの項目を参考にして、衛生委員会で審議のうえ、各々の判断で質問項目を選定することができるとストレスチェック指針(正式名称「心理的な負担の程度を把握するための検査及び面接指導の実施並びに面接指導結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針」)で示されています。
つまり、上記の3つの項目を含んでいれば、事業者の判断で質問票を選択することができるのです。
なお、質問項目の選択には、一定の科学的根拠があるものが望ましいです。
加えて、質問項目の注意点ですが、性格診断や適性検査の項目を含める、あるいは希死念慮、うつ病検査等を含めることは不適切とされています。

どんな調査票があるの?

ストレスチェックの質問票は大きくわけて3つあります。
23項目版、57項目版、80項目版です。それぞれ、どのような特徴があるのでしょうか

57項目版

57項目版は、厚生労働省が推奨している標準的な調査票で、職業性ストレス簡易調査票と呼ばれるものです。
後述する80項目版と比較すると、短時間で回答できるメリットがありますが、あくまでも個人のストレス状態の把握を念頭においているため、職場全体に対する評価項目は含まれていないという特徴があります。
なお、23項目版は、57項目版を簡略化したものとなります。

80項目版

57項目版に追加で23問加えた調査票で、新職業性ストレス簡易調査票と呼ばれるものです。
57項目と比較すると回答に時間は要しますが、職場のハラスメントやワークエンゲイジメント、上司のマネジメント、経営層との信頼関係など、職場全体について、より詳細にストレスの状況を把握できます。

なお、23項目版、57項目版、80項目版のほかにも、企業独自の質問票を使用している場合もあります。

どの質問票を使用している企業が多いの?

では、どの質問票を使用している企業が多いのでしょうか。
2020年度の調査では、ストレスチェックを実施する企業の半数以上が57項目版を使用していることがわかります。
一方、企業規模が300人以上事業場では、約30%が80項目版で実施していることがわかりますね。独自の調査票を使用している企業も、割合としては少数ですが存在しています。

ドクタートラストでの実施の傾向

では、ドクタートラストでストレスチェックを実施する企業の傾向はどうでしょうか。
下図のように、ドクタートラストでは、80項目版で実施する企業が増加傾向にあります。
2018年度に80項目版を採用した企業はわずか3%でしたが、2021年度には、約80%の企業において使用されています。
そもそも、「ストレスチェック制度導入マニュアル」(厚生労働省)に記載があるように、ストレスチェックは、「労働者が自分のストレスの状態を把握しセルフケアに努める」だけではなく、「職場の改善を行い、メンタルヘルス不調を未然に防止するための仕組み」です。
そのため、57項目版では把握しきれない、上司のマネジメントに関する指標やハラスメントの実態、ワークエンゲイジメントなど、職場の雰囲気や状況が把握できることで、職場環境の改善にもつながりやすくなります。
そういった利点も踏まえて80項目版を使用する企業様が増加しています。

まとめ

今回はストレスチェック質問票の57項目、80項目の違いや、全国的な傾向についてご紹介しました。
80項目版を導入することで、職場環境の詳しい分析に、ひいては会社全体の生産性向上やメンタルヘルス不調の防止につながると考えられます。
ストレスチェックは実施することが目的ではありません。
そういった点も踏まえて調査票についてご検討くださいね。
なお、ドクタートラストでは、ストレスチェックを実施するだけではなく、専門家からの集団分析結果のフィードバックを無料で行っています。集団分析結果の読み取り方や職場環境改善の方策もご提案しておりますので、ぜひドクタートラストのストレスチェックをご活用ください。

DL

<参考>
・ 東京大学大学院医学系研究科精神保健学分野「事業場におけるメンタルヘルスサポートページ」
・ 厚生労働省「心理的な負担の程度を把握するための検査及び面接指導の実施並びに面接指導結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針」
・ 令和3年度労災疾病臨床研究事業費補助金「ストレスチェックの集団分析結果に基づく職場環境改善の促進を目的とした調査項目及びその活用方法論の開発(PDF)」
・ 厚生労働省「ストレスチェック制度導入マニュアル」

執筆者

【保健師】根本 裕美子
【保有資格】保健師/看護師/第一種衛生管理者/人間ドック健診情報管理指導士
【コメント】行政保健師として住民の方々の健康のサポートをしたのち、働く人々の健康づくりをサポートをしたいと考え、現在産業保健領域で活動しています。ストレスチェックの分析やセミナーなどを通して、働く皆さんが、体も心もいきいきと過ごせるよう、そして、楽しく安心して働ける職場を増やすことにつながるよう、情報をお伝えしていきます。

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