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会社にとってより良い集団分析結果を~効果的な分析をしていくためには

最終更新日 2023-01-10

あなたの企業はストレスチェック後の集団分析結果をどのように活用していますか。
毎年行われるストレスチェックの分析結果を基に何がわかるのか、イマイチ理解できず企業に眠る問題点をそのままにしていないでしょうか。
本記事では、集計方法を工夫することで見えてくるグループ属性の特徴を紹介します。

ポイントを抑えていれば効果的?一般企業も取り入れている集計方法

集団分析の集計方法には、基本的に1つのデータ項目の散らばる値によって全体の傾向を掴む単純集計を用います。
もう一段階ステップを踏み込んだクロス集計では、複数のデータ項目を掛け合わせることによって単純集計だけでは見えてこなかった属性が見つけられます。

<具体的な例>

卸内業界A社のアンケート調査では、設問「食後にお菓子を食べますか」に対し、「はい」と答えた人数が全体の7割、「いいえ」と答えた人が全体の3割でした。
さらに、これを性別の分析も加えると、「はい」うちわけは、男性60人中の35人(回答率58%)と女性40人中の35人(回答率88%)でした(表1)。
女性のほうが食後にお菓子をよく食べる傾向にあることがわかります。
この結果から、夜の時間帯(19時以降等)にお菓子ゾーンをレジ前に置き、女性の目線に留まりやすい高さに焦点を当てて商品陳列することにより、重点的に販売する商品を絞り込み、売れ筋を把握することで在庫管理や販売予測が立てられ、店の売り上げにつながりました。

表1 Q1「夕食後にお菓子を食べますか」

合計 はい いいえ
全体 100人 70人 30人
性別 男性 60人 35人 25人
女性 40人 35人 25人

単純に全体結果のみだと「夕食後にお菓子を食べる人が多い」という集計結果しかわかり得なかったところ、「性別」という項目を掛け合わせることによって女性に焦点を向けたアプローチといいうプラスの働きかけが可能になったのです。
クロス集計は、企業のマーケティング活動にも有効的な手法であると言えるでしょう。

分析の適切な流れとは?有意義な結果が最も重要!

集団分析で大切なポイントは、分析する枠(大集団・中集団・小集団)を誤らないことです。
一般的には、「会社(組織)全体→部署→個人」と大から小へ細分化して分析していきます。
組織全体の結果を見ずに初めから部署ごとのクロス集計を行ってしまうと、組織全体の傾向と部署ごとの傾向の比較ができず、何から改善していけばよいのかが不明確になります。
単純集計により全体傾向をしっかり把握することで細分化した結果との相互関係や突出した特徴への気づきにつながると考えられます。

会社(組織) 部署 個人

さまざまな視点から見る分析結果の違いと傾向とは

ドクタートラストでは、部署を基準としてさまざまな区分(職位/役職/職種/雇用形態/残業時間/勤務地など)のクロス集計が可能です。
今回は実際にドクタートラスト仕様の集団分析冊子で単純集計とクロス集計をした場合の結果の違いを見ていきましょう。
表2では、「A部」は全社で「最も高ストレス者が少ない部署」と読み取れ、高ストレス者数が多い「B部」や「B部」に注目してしまいがちです。

表2

表2の会社では毎年高ストレス者数が変わらなかったと仮定します。
さらに「原因は役職や職位ではないだろうか」と推測し、「部署×役職」でクロス集計を行ってみたとします。
表3では、全社の中で一番高ストレス者数が少なかった「A部」に焦点を当てて「部署×役職」でクロス集計を行った結果です。

表3

結果を見てみると、A部では、「一般社員」次いで「課長」にストレス負荷が多い傾向にあとわかりました。
クロス集計により「A部」の課題が浮き彫りになったといえるでしょう。
これらの結果を基に、全国平均を偏差値50とした時の各尺度の良し悪しをランキング化したのが表4です。
今回の場合、「経営層との信頼関係」、「上司からのサポートや上司のリーダーシップ」が全国平均よりも不良であることから、上司との関係性(普段からのコミュニケーションや業務の報告・相談・連絡等のやりとり)が薄く、互いに業務内容や人柄を把握しきれていないのではないかと推測できます。
また、「役割葛藤」の偏差値も低い傾向にあり、近年ハラスメント問題が大きく問題視されている中で部下への指導が難しかったり、上司と部下に挟まれて判断に困ったりするため「一般社員」に次いで中間管理職である「課長」の高ストレス者数が多いのではないかとも考えられるかもしれません。

表4

表5では、上記の結果を改善するうえで「どの項目に目を向けていけば職場環境改善に効果的か」をランキングした表です。
「キャリア形成」「成長の機会」「仕事の適性」が上位にあることから、以下の取り組みが必要になってくると考えられます。

・ キャリア形成
自分のスキルや経験の振り返りをする
課題点を把握し解決するための計画をたてる
コミュニケーションや雑談を増やす
役職や年代ごとのキャリア研修の拡大
・ 成長の機会
必要な業務に人材をアサインし、複数の業務を経験させ、社員の成長を促す
グループワークや部署内のミーティングを定期的に行い、個々の発信力、創造力を磨き、戦力の育成を行う
・ 仕事の適性
定期的に個別面談を行い、業務内容のフィードバックで振り返りをする(業務でうまくいったこと、次月の課題点等)

表5

このように、役職という詳細の情報を組み合わせてクロス分析を行うことで会社全体結果だけでは見えてこなかった問題点や改善策を新たに発見する良いきっかけになるでしょう。

自分の会社はクロス集計向き?~メリットとデメリットを把握しておこう

自分の会社の特徴や傾向を掴むきっかけとなる集団分析結果ですが、クロス集計が向いている企業とそうでない企業があります。
以下にクロス集計のメリット・デメリットをまとめます。

<クロス集計のメリット>
・ より詳細に分析することで属性(性別・年代・職位・役職・雇用形態・勤務地・残業有無等)ごとの傾向が読み取れる
・ クロスするグループの組み合わせが自由に可能
・ グループごとの比較がしやすく、統計の知識がない人にもわかりやすい
・ 特定の質問項目がほかの質問項目とどのような関係性があるかを分析する上で最適な集計方法であり、応用範囲が広い
<クロス集計のデメリット>
・ もともと人数の少ない企業(50名以下等)にてクロス集計をしてしまうと回答に偏りが出てしまい正確な分析を行えない場合がある
・ 各グループで一定数の回答数(受検率)が必要
・ クロス集計によって項目間での比較を行うことができるが、それらが常に項目間の関連性を表しているわけではない。

従来、企業が抱える課題の分析は、経営層による勘や経験則によるものがほとんどでした。
しかし、データ分析から得た結果は、収集・蓄積したデータを分析・加工したものになるため、これまでの精度の低い情報ではなく、組織の資源として資産化することが可能になりました。
このようにデータ分析の活用は、これまで組織内に散らばっていた情報を集約して、各部署で見た時の問題点やそこから新たな改善策を導き出す手段になるでしょう。
今後企業の職場環境改善のために、集団分析を上手く活用してみませんか。

DL

執筆者

【アナリスト】押切 愛里
【職位】アナリスト
【コメント】前職で一緒に働いていた上司や同僚がメンタルヘルスに陥っている状況で私自身「改善する方法はないか」「何かしらサポートしたい」と思い、現在は「職場環境改善に効果的な情報」や「ストレスチェック結果から判明した最新情報」を中心に分析・発信しています。今後も多くの人がいきいきと元気に働ける職場づくりをモットーに役立つ情報をお届けします。

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