50名未満の事業所にもストレスチェックの実施が義務化されることになり、企業にとっても従業員にとってもストレスチェックがより身近なものになります。ドクタートラストでは、ストレスチェックで高ストレスと判定された方からの相談を外部相談窓口で相談をお受けしており、日々さまざまな相談が寄せられています。
今回は、ご相談が多い「産業医面談を受けるかどうか迷っている」という悩みを取り上げてみます。
高ストレス者を放置しておくことで、企業の安全配慮義務違反や、休職・退職者の増加で慢性的な人手不足に陥ってしまうリスクがあります。
本記事が、産業医面談について迷う従業員の心情について理解を深め、ストレスチェックの本来の目的である「労働者のメンタルヘルス不調の未然防止」のための面接指導につなげるきっかけになれば幸いです。
悩み①産業医面談を受けることが、会社にバレたくない
産業医面談を受けることについて「会社にバレたくない」という思いを持っている従業員は多いようです。
バレたくない思いの背景として、「昇進・昇給を見込めなくなったり、異動させられてしまう」とか「メンタルに問題がある人間だと思われたくない」とか「社内で噂になってしまう」などの不安を話す方がいらっしゃいます。
ストレスチェック後に産業医面談を受けるためには、産業医面談日時の調整をする必要があるので、どうしても会社側の担当者(実施事務従事者)や産業保健スタッフなどに知らせることになります。ですので、会社(実施事務従事者や産業保健スタッフなど)に知られずに産業医面談を受けることは、今のストレスチェック制度では叶わないのが実情です。また、面接指導の申出を行った場合には、ストレスチェックの結果(具体的な回答は伏せられます)が事業者に提供されることに同意されたとみなされるため、完全に情報を伏せて産業医面談の申し込みをすることは難しいのです。
ですが、実施事務従事者には守秘義務があること、ストレスチェックの結果や産業医面談の申し込みをしたことによる不利益な取り扱いは法律で禁止されているので、安心して申込んでよいことを明文化しておくことで、従業員の不安を軽減できると考えられます。
悩み②産業医面談を受けると、即休職させられるのではないかと不安
「産業医面談を受けると、即休職させられるのではないか」は、意外と多い誤解のひとつです。休職となれば収入に影響が出ますし、仕事への責任感から今休職するわけにはいかないと考え、「休職を命じられるくらいなら産業医面談は受けない」と思う方も少なくありません。しかし、産業医から見て、すぐにでも休職をしなければ命に関わる状態であると判断される可能性はゼロではありませんが、ごくまれです。
多くの場合、産業医面談ではまずは高ストレス判定になった原因について振り返り、「ストレスを減らすには何が必要か?」について話し合うということが多いようです。その中で、休職することも考えたほうがよいという助言を受ける可能性はありますが、まずは業務の改善や、残業時間の見直しなどから始め、それでも休職が必要かどうかや、就業上の措置は必要かどうかについて慎重に検討していくことになります。
悩み③産業医面談のために席を外すことが気まずい
企業の規模や風土にもよりますが、業務中に席を外すと目立ってしまうため、産業医面談をためらっている方もいらっしゃいます。また、「チームのメンバーも同じように忙しく、もっと大変な思いをしている人もいるのに、自分だけ面談を受けてよいのか」と自分を責めたり恥じたりしてしまう方もおり、本当は面談を受けたいのに我慢している方が一定数いると考えられます。
上司に産業医面談を受けてくることを率直に報告できる人もいますが、産業医面談のことを言いたくない場合には「〇〇部に確認してきたいことがあるので△分程度席を外します」と報告する方もいます。
このような場合は、上司の理解度やモラルによるところが大きいですが、業務中に席を外すことについて深く詮索をしないことや、席を外す理由を他のメンバーに言いふらさないといった配慮が求められます。
会社ができる工夫
- 産業医面談の申出によって、解雇、異動、降格、といった不利益な扱いをしないことを明確に周知する
- 情報の取扱いについて、実施事務従事者は人事権がない立場であることや、守秘義務があることを周知する
- 実施事務従事者を担当するスタッフに、ストレスチェック運営に関する研修を受けてもらい、情報管理の取扱いについて十分に理解してもらう
- 産業医面談の面接指導の申し出がしやすくなるよう、申し出の窓口を産業保健スタッフや外部機関とすることも可能であることを伝える(その場合、申し出があった旨が事業者に伝わることはあらかじめ労働者に伝える必要があります)
- 高ストレス者(面接指導対象者)になったら、相談だけでもOKであることや、話したくないことは話さなくてもOKなど、産業医面談のイメージを和らげる一文を加える
- 管理者研修の機会などを活用し、ストレスチェック後の、上司に求められる対応を伝える
以上の工夫に共通するのは、情報を適切に提供することです。
一般的に、人は「よくわからないこと」に不安を感じやすいものです。そのため、適切に情報を提供することで、「それならば産業医面談の申し出をしてみよう」と考える従業員も増える可能性がありますので、ストレスチェック実施の際の参考にしてください。
よくある質問(Q&A)
Q1. 産業医面談を受けたことは、会社に知られてしまいますか?
A. 面談日時の調整のために、実施事務従事者や産業保健スタッフに知られることになります。ただし、実施事務従事者には守秘義務があり、面談を申し込んだことを理由とした解雇・異動・降格などの不利益な取り扱いは法律で禁止されています。
Q2. 産業医面談を受けると、すぐに休職させられますか?
A. そのようなことはほとんどありません。多くの場合、まずは高ストレスの原因を振り返り、業務の改善や残業時間の見直しなどから対応を検討します。休職が必要かどうかは、その後の経過を見ながら慎重に判断されます。
Q3. 産業医面談のために席を外すことを、上司に言いたくない場合はどうすればいいですか?
A. 「〇〇部に確認したいことがあるので、△分ほど席を外します」のように、理由を具体的に伝えない形で報告する方もいます。上司には、業務中の離席について深く詮索しない配慮が求められます。
Q4. ストレスチェックの結果は、会社に筒抜けになりますか?
A. 面接指導の申出を行った場合、ストレスチェックの結果(具体的な回答は伏せられます)が事業者に提供されることに同意したとみなされます。ただし、個別の回答内容が開示されるわけではありません。
Q5. 高ストレス判定が出たら、必ず産業医面談を受けなければなりませんか?
A. 義務ではありません。ただし、面談を受けることで自身のストレス状態を整理し、職場環境の改善につなげることができます。まずは相談だけでも利用できる場合もありますので、会社の案内を確認してみてください。


