ストレスチェックを実施する際、まず決める必要があるのが「質問項目数」です。
現在は57項目版と80項目版が主流ですが、どちらを選ぶべきか迷う企業も多いのではないでしょうか。
今回は基本の57項目版と80項目版の違いや活用方法についてわかりやすく解説します。
ストレスチェック57項目版・80項目版とは
ストレスチェック制度で広く用いられているのが、厚生労働省が推奨する「職業性ストレス簡易調査票」です。
標準形として57項目版が、より詳細な分析を行うために80項目版がそれぞれ存在します。どちらも個人のストレス反応や職場環境の課題を把握するために用いられますが、目的や運用体制によって使い分けることが重要です。
57項目と80項目の違いを見ていきましょう。
57項目版
基本構成として、以下の3領域で構成され、企業が最低限把握するべきストレス状況を網羅しています。
ストレスチェック制度上の「高ストレス者判定」もこの57項目を基準に行われます。
- 仕事のストレス要因
- 心身のストレス反応
- 周囲のサポート
80項目版
57項目版の設問を含みつつ、以下のようなより詳細な心理社会的要因や職場環境改善につながる項目を追加した発展版です。
- 働きがい
- ワーク・エンゲイジメント
- ハラスメント要因
- 仕事の裁量権やキャリア展望 など
違いのまとめ
57項目版と80項目版の主な違いを表にまとめました。
| 観点 | 57項目版 | 80項目版 |
| 基準 | 厚労省推奨の基本版 | 詳細分析の拡張版 |
| 主な目的 | 高ストレス者の把握 | 職場改善・組織診断の高度化 |
| 設問量 | 標準 | やや多い |
| 分析精度 | 必要最低限 | 深掘り可能 |
57項目版、80項目版のメリット・デメリット
57項目版のメリット
- 実施の負担が少ない、設問数が適度で従業員の回答負担が軽い
- 基本的なストレス状況を把握しやすい、高ストレス者判定に十分な精度がある
- 中小企業でも導入しやすい、項目が少ないため運用難易度が低い
57項目版のデメリット
- 組織課題の細かな分析には物足りない
- ハラスメントや働きがいなどの新しい課題が見えにくい
- 部署比較や改善施策の企画では追加調査が必要になる場合がある
80項目版のメリット
- 組織改善につながる深い分析が可能、エンゲイジメントや裁量権など組織マネジメントに直結する指標が得られる
- 部署の課題がより詳細に可視化できる、予防的なメンタルヘルス対策が行いやすい
- 離職防止・エンゲイジメント向上策に活用しやすい
80項目版のデメリット
- 回答負担が重く、回答率が下がりやすい
- 実施後の分析に時間と専門知識が必要
- 企業規模によっては使いこなせない場合もある
57項目版、80項目版の活用方法
57項目版の活用方法
- 高ストレス者の抽出・フォロー
→制度上の義務である「高ストレス者の面接指導」につながる - 最低限の組織診断
→部署ごとのストレス水準を把握し、負担が大きい部門の問題点を洗い出す
- 改善への入口として使う
→57項目で課題が見えた部署を対象に、追加ヒアリングや80項目版への移行を検討する
80項目版の活用方法
- エンゲイジメント指標による組織活性化策の立案
→働きがい、達成感、主体性などの情報を活用して、モチベーション向上策を立てる - ハラスメント・職場風土のリスク把握
→上司の支援や公平性などの項目から、組織文化の改善ポイントを特定できる - 人事施策と連動した分析
→配置・異動の最適化、管理職教育、キャリア支援など、より精緻な施策に結びつけやすい
- 経年変化の追跡
→働きがい、裁量、支援などの変動を追うことで、改善施策の効果を測定できる
さいごに
ストレスチェックは、法令遵守だけでなく組織の健康度を高める重要なツールです。
57項目版は基本的なストレス状況の把握に適し、80項目版はより深い組織分析や職場改善に有効です。
企業の規模、改善の目的、分析体制に応じて、最適な項目数を選択することで、メンタルヘルス対策はより効果的に機能します。
必要に応じて両者を併用し、継続的な改善に活かしていくことが理想的です。
ドクタートラストでは、57項目版も80項目版も同料金で実施が可能です。
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80項目版のほうが分析内容が充実しているため、従業員のセルフケアや企業の職場環境改善を重視する企業には80項目版をおすすめしています。
ぜひお気軽にご相談ください。
よくある質問
Q1. ストレスチェックは57項目版と80項目版のどちらを選ぶべきですか?
A. 基本的なストレス状況の把握や高ストレス者の抽出が目的なら57項目版で十分です。一方、エンゲイジメントやハラスメント要因など、より詳細な組織分析や職場改善を行いたい場合は80項目版がおすすめです。企業の規模、目的、分析体制に応じて選択しましょう。
Q2. 80項目版のストレスチェックはどんな企業に向いていますか?
A. 組織改善に力を入れたい企業、エンゲイジメント向上や離職防止に取り組みたい企業、部署ごとの詳細な課題把握が必要な企業に向いています。ただし、回答負担が大きくなるため、分析体制が整っていることも重要です。
Q3. 57項目版で高ストレス者は正確に判定できますか?
A. はい、できます。厚生労働省が推奨する57項目版は、制度上の「高ストレス者判定」の基準となっており、必要十分な精度があります。高ストレス者の抽出・フォローが主な目的であれば、57項目版で問題ありません。
Q4. 途中から57項目版を80項目版に変更することはできますか?
A. 可能です。57項目版で課題が見えた部署を対象に、次年度から80項目版に移行する企業もあります。また、全社では57項目を実施し、特定の部署のみ80項目版を導入するなど、柔軟な運用も検討できます。


