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海外赴任者のストレスとは?ストレスチェック実施義務はある?

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みなさんの会社では、海外赴任者へのサポートは十分できているでしょうか?
海外赴任中は慣れない環境の中でストレスを感じやすく、こころや体調にも大きな影響を与えます。
「海外赴任者の半数以上が労働環境の変化により仕事でストレスを感じている」という調査もあり、海外赴任者のストレスの多さやメンタルヘルスケアの必要性が理解できるのではないでしょうか。
また、集団分析結果のフィードバックの際に、「海外赴任者の状況について詳しく説明してほしい」「海外赴任者のストレスケアはどのようにしたらよいか」といったご相談を受ける機会もあります。
そこで今回は、海外赴任者のストレスチェックやメンタルヘルス対策についてお伝えします。

海外赴任のストレスとは?

みなさんも仕事で異動があったり、役職がついて新しい仕事が増えたりした際にストレスを感じることがありますよね。
ストレスは、環境の変化によって起こります。
適度なストレスであれば、やる気が出たり、生産性が高まったり、良い効果を生み出しますが、過度なストレスはメンタルヘルス不調を引き起こすことがあります。

海外赴任でも、新しい環境下でさまざまなストレスを受けることになります。

環境の変化によるストレス

海外赴任では、「食文化」や「気候」、「治安」、「言語」など、日本を離れて新たな文化や環境に適応する過程で感じるストレスがあります。
慣れない食事や気温の中で生活リズムも乱れて体調を崩しやすくなる、治安などで不安を感じる、さらに言語だけでなく価値観の違いによって戸惑いを感じることもあるでしょう。
また、近年では新型コロナウイルス感染症の感染拡大を機に、感染への不安やワクチン接種の対応など、日本とは異なった医療体制や価値観の共有の困難さなどによって、新たな悩みやストレスを感じている人も多いでしょう。

人間関係によるストレス

さらに海外赴任では、本人や帯同する家族も含め、日本での人間関係を離れ、海外で新たな人間関係を構築することとなります。
「言語の違う上司との関係性がうまく行かない……」「帯同した家族が海外に馴染めない……」などさまざまなストレスを感じることでしょう。
加えて、これまで気軽に相談できた家族や友人、会社の同僚なども少なくなります。
これにより、ストレスを感じたとしても気軽に相談することが難しくなったり、ストレスを発散できる場が少なくなったりすることが考えられます。
このような状況から、メンタルヘルス不調を起こす可能性があります。

もちろん、海外の文化に触れ、新しい価値観を得たり、チャレンジできる環境を得たりすることもできるでしょう。
一方で、それはストレスにもなり得ることに留意しましょう。

海外赴任者のストレスチェック実施義務は?

海外赴任者のストレスの状況を把握するうえでは、ストレスチェックの活用が有効です。

日本から海外赴任している労働者のストレスチェック実施義務は?

日本の企業に在籍しており、海外に赴任されている場合であってもストレスチェックの実施対象者となります。
海外赴任者にも受検を促し、ご自身のストレスの状況からセルフケアにつなげてもらいましょう。

海外で雇用された場合の実施義務は?

一方で、海外の現地法人で雇用された場合には、日本の法律の適用外となり、ストレスチェックの実施対象者となりません。これは、健康診断と同様の扱いになります。

海外赴任者のストレスチェック集団分析

ストレスチェックを受検後、集団分析結果から海外赴任者のストレスの要因を把握したい企業も多いでしょう。
しかし、下限人数(集団として分析する最少人数)を下回る場合には、集団分析結果を出すことができません。
そのため、同様の業務を行っている部署と合算したり、衛生委員会で検討して下限人数を少なく設定したり、海外赴任者のストレス状況を企業としても把握できるように検討することも重要なポイントです。

ストレスチェック実施後の対策

ストレスチェックでストレスの状況が把握できたら、次にどのようなサポートを検討すればよいでしょうか。
実際に他社様で実施されているサポート体制の具体例を紹介します。

相談窓口の設置などでストレスコントロールをサポート

これまで説明したように、海外赴任者はストレスを感じやすい環境にいます。
ストレスを感じたり、不安を感じたときに気軽に相談できる相談窓口を設置することもひとつの方法です。
気持ちを話す機会があるだけで、気持ちが軽くなることもあるでしょう。
企業で提供している相談窓口や産業保健部門の相談窓口、健康保険組合などの相談窓口では、海外赴任者からの相談に対応できる場合があります。
ご自身の企業でそういった相談窓口が利用できる場合には、海外赴任者に周知しましょう。
また、相談窓口の運用では、時差等を考えて、メール、電話など複数の相談対応ができたり、本人だけでなく家族からの相談を受けることで、不調が起きた際に迅速に対応できるというポイントも重要でしょう。

定期的な面談を行う

相談窓口を設置したとしても、なかなか相談につながらない場合もあるため、産業保健部門の専門職や人事担当者等が定期的に面談を行い、仕事やストレスの状況などを把握してケアを行うことも有効でしょう。
これにより、不調を未然に防止することにもつながります。
赴任前に、セルフケアのセミナーを受けてもらったり、何かあった時に気兼ねなく相談できるような関係づくりを行ったりしておくことも重要ですね。

まとめ

今回は海外赴任者のストレスについて見てきました。
海外赴任者は環境の変化によりストレスを感じやすく、サポートが不足しやすいことから、メンタルヘルス不調となってしまうこともあります。そのため、企業としてストレス状況を把握し、支援体制を構築していきましょう。
ドクタートラストでは、ストレスチェックの実施はもちろん、相談窓口の設置やセミナー等、お手伝いできるサービスを多数ご用意しております。
ぜひお気軽にお問合せください。

DL

<参考>
・ 株式会社グローバルライフデザイン「海外駐在員と帯同家族向けサポートに関するアンケート調査」
・ 「海外赴任者のメンタルヘルス対策―異国での勤務をチャレンジングで成長する機会にするために」(『ビジネス・レーバー・トレンド』2017年10月号、独立行政法人労働政策研究・研修機構)
・ 厚生労働省「ストレスチェック制度関係Q&A(PDF)」

ABOUT ME
【保健師】根本 裕美子
【保有資格】保健師/看護師/第一種衛生管理者/人間ドック健診情報管理指導士 【コメント】行政保健師として住民の方々の健康のサポートをしたのち、働く人々の健康づくりをサポートをしたいと考え、現在産業保健領域で活動しています。ストレスチェックの分析やセミナーなどを通して、働く皆さんが、体も心もいきいきと過ごせるよう、そして、楽しく安心して働ける職場を増やすことにつながるよう、情報をお伝えしていきます。