ストレスチェックは、労働安全衛生法66条の10に基づき、事業者に実施が義務付けられている制度です。
2015年の制度施行以降、常時50人以上の労働者を使用する事業場では、年1回の実施が求められてきました。さらに、2025年5月14日に公布された改正労働安全衛生法により、今後は50人未満の事業場にも義務が拡大されることが決定しています。
ストレスチェックは単なるアンケートではなく、「心理的な負担の程度を把握するための検査」として法令に位置付けられた健康確保措置です。
企業には、実施体制の整備から面接指導対応、記録管理まで、一定の対応が求められます。
本記事では、条文の趣旨から企業に課される義務、実務対応のポイント、想定されるリスクまでを整理します。
労働安全衛生法66条の10とは何か
制度の位置づけ
労働安全衛生法66条の10は、労働者の心理的負担の程度を把握するための検査について定めた規定です。
同法66条が健康診断を定めているのに対し、66条の10はメンタルヘルス対策としての予防的措置を規定しています。健康診断と並ぶ健康確保措置の一つと位置付けられています。
(健康診断)
第66条 事業者は、労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による健康診断(第66条の10第1項に規定する検査を除く。以下この条及び次条において同じ。)を行わなければならない。(中略)
(心理的な負担の程度を把握するための検査等)
出所:労働安全衛生法
第66条の10 事業者は、労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師、保健師その他の厚生労働省令で定める者(以下この条において「医師等」という。)による心理的な負担の程度を把握するための検査を行わなければならない。
制度の目的
ストレスチェック制度の目的は、次の2点にあります。
- メンタルヘルス不調の一次予防
- 職場環境の改善
不調者の選別や評価を目的とする制度ではなく、労働者自身の気づきを促し、組織としての改善につなげることが趣旨とされています。
面接指導との関係
ストレスチェックの結果、高ストレスと判定された労働者が申し出た場合、事業者は医師による面接指導を実施する必要があります。
面接指導は本人の申出が前提であり、事業者が一方的に強制することはできません。また、申出を理由とする不利益取扱いは禁止されています。
企業に求められている主な義務
① 年1回以上の実施
常時50人以上の労働者を使用する事業場では、年1回以上の実施が義務付けられています。
実施義務を負う主体は事業者です。外部機関へ委託する場合であっても、法的責任は事業者にあります。
② 医師等による実施体制の整備
ストレスチェックは、以下が実施者となる必要があります。
- 医師
- 保健師
- 厚生労働省令で定める者
実施者の選任、個人結果の取扱、情報管理体制の整備は、制度運用上の重要なポイントです。企業側が本人同意なく結果を取得することは認められていません。
③ 高ストレス者への面接指導体制
高ストレスと評価された労働者が面接を申し出た場合、事業者は医師による面接指導を実施しなければなりません。
その後、医師の意見に基づき、必要に応じて就業上の措置を検討する義務があります。
対象となる労働者の範囲
ストレスチェックの対象は正社員に限りません。
労働契約に基づき使用される労働者が対象となり、以下も含まれます。
- パートタイマー
- アルバイト
- 契約社員
期間の定めのない労働契約により使用される者(期間の定めのある労働契約により使用される者であって、当該契約の契約期間が1年以上である者並びに契約更新により1年以上使用されることが予定されている者及び1年以上引き続き使用されている者を含む。)であること。その者の1週間の労働時間数が当該事業場において同種の業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間数の4分の3以上であること。
※出典:厚生労働省「労働安全衛生法に基づく ストレスチェック制度 実施マニュアル」
派遣労働者については原則として派遣元事業者が実施義務を負います。
役員は原則対象外ですが、管理監督者は労働者に該当するため対象となります。
違反した場合のリスク
ストレスチェック未実施に対する直接的な罰則規定はありません。
しかし、常時50人以上の事業場では、実施結果を労働基準監督署へ報告する義務があります。この報告を怠った場合、労働安全衛生法第120条に基づき、50万円以下の罰金が科される可能性があります。
- 労働基準監督署による指導
- 是正勧告
- 監督時の確認事項
また、安全配慮義務違反が争点となる場面において、制度未整備や記録不備が問題視される可能性もあります。
実務に落とし込む際のポイント
実施そのものだけでなく、次の点が重要です。
- 実施記録の保存
- 本人同意の管理
- 面接指導の実施記録
- 医師意見に基づく措置検討の記録
- 集団分析と職場環境改善への活用
制度を形式的に実施するのではなく、継続的な運用として定着させることが求められます。
よくある誤解
誤解① 50人未満は関係ない
現在は50人未満の事業場に実施義務はありませんが、2025年5月に公布された改正労働安全衛生法により、今後は50人未満にも義務が拡大されることが決定しています。早めの準備が必要です。
誤解② 人事が自由に結果を閲覧できる
ストレスチェックの個人結果は、本人の同意なく事業者(人事含む)が取得することは法令上認められていません。結果を閲覧できるのは実施者(医師・保健師等)、実施事務従事者に限られます。
誤解③ 面接指導は強制できる
面接指導は、高ストレスと判定された労働者本人が申し出て初めて実施できます。事業者が強制することはできません。また、申出を理由とした不利益取扱いも禁止されています。
ストレスチェック制度の運用でドクタートラストが選ばれる理由
ドクタートラストは、企業のストレスチェック制度運用を支援してきた実績があります。
法令に基づいた運用設計から実施支援まで、企業の実務負担を軽減しながら制度対応をサポートしています。
主な支援内容は以下の通りです。
- 法令に準拠したストレスチェック実施体制の構築支援
- ストレスチェックの実施および結果管理
- 集団分析および職場環境改善のサポート
- 5年間の記録保管
制度を形式的に実施するのではなく、企業の実務に合わせた運用を支援します。
まとめ
労働安全衛生法66条の10に基づくストレスチェックは、企業に課された法定義務です。
実施体制の整備、面接指導対応、記録管理、職場改善への活用までを含めて制度運用といえます。
今後は事業場規模にかかわらず対応が求められる方向にあります。条文の趣旨を理解し、実務として確実に落とし込むことが重要です。
まずは自社の実施体制を見直すことから始めてみてください。ご不明な点はドクタートラストへお気軽にご相談ください。
よくある質問
Q1. ストレスチェックはいつから義務化されましたか?
A. 2015年12月に施行された労働安全衛生法の改正により、常時50人以上の労働者を使用する事業場で義務化されました。さらに2025年5月公布の改正法により、50人未満の事業場にも義務が拡大される方向が決定しています。
Q2. ストレスチェックを実施しなかった場合、罰則はありますか?
A. ストレスチェック未実施そのものへの直接的な罰則規定はありません。ただし、常時50人以上の事業場では実施結果を労働基準監督署へ報告する義務があり、この報告を怠った場合は労働安全衛生法第120条に基づき50万円以下の罰金が科される可能性があります。
Q3. パートやアルバイトもストレスチェックの対象になりますか?
A. 対象は正社員に限りません。一定の要件(労働時間が通常の労働者の4分の3以上など)を満たすパートタイマー・アルバイト・契約社員も対象となります。
Q4. 人事担当者はストレスチェックの結果を閲覧できますか?
A. 本人の同意なく事業者(人事含む)が個人の結果を取得することは法令上認められていません。結果を取り扱えるのは実施者(医師・保健師等)、実施事務従事者に限られます。
Q5. 高ストレス者が面接指導を拒否した場合はどうなりますか?
A. 面接指導は本人の申出が前提であり、事業者が強制することはできません。高ストレスと判定されても本人が申し出なければ面接指導は実施されません。なお、申出を理由とした不利益取扱いは禁止されています。


