看護師はストレスが高い職種として知られていますが、実際のデータはどうでしょうか。ドクタートラストが約47万人を対象に実施した2023年度ストレスチェックの分析では、「医療、福祉」は総合健康リスクで全業種3位、仕事の負担リスクでは全業種2位という結果でした。
患者さんの命を預かる責任の重さ、緊張が続く職場環境、夜勤を含む不規則な勤務体制、慢性的な人手不足——これらが複合的に絡み合い、看護師のストレスを高めています。
この記事では、そのメカニズムと具体的な対策を解説します。
看護師のストレスはどれくらい?
ドクタートラストが約47万人(2023年度)を対象に実施したストレスチェックの分析結果は、以下のとおりです(出典:2023年度ストレスチェック全業種データ分析レポート)。
- 総合健康リスク:「医療、福祉」は全業種中3位
- 仕事の負担リスク:「医療、福祉」は全業種中2位
- 高ストレス者率:医療業は15.7%(全業種平均15.2%)
高ストレス者率は全国平均とほぼ同水準に見えますが、医療業は精神障害による労災請求件数が他業種より多く、仕事の負担という観点では突出したリスクを抱えています。
看護師のストレス要因とは?
では、看護師はどのようなことで「ストレス」を感じているのでしょうか。
主な要因を以下に記載します。
業務量の多さと責任の重さ
看護師は患者さんのケアや医療処置、記録業務など、多岐にわたる業務をこなす必要があります。
また、看護師は人手不足の問題が深刻です。
こうした現状から、一人当たりの業務量増加や長時間労働の問題が発生している病院もあるでしょう。
また、看護師は、業務中は常に患者さんの状態に気を配り、わずかな変化も見逃さないようにするために緊張感が続きますし、医療ミスが許されないというプレッシャーがあるため、業務特性上、ストレスが高くなりやすい職種です。
人間関係の複雑さ
看護師は、業務上、患者さんやその家族とのコミュニケーション、医師や他の医療スタッフとの連携など、様々な人間関係の中で業務を行っています。
その中で、医師との意見の食い違い、同僚との人間関係など、人間関係の複雑さから、ストレスを感じることもあると考えられます。
不規則な勤務体制
夜勤や交代制勤務は、生活リズムを乱し、睡眠不足や疲労の蓄積につながります。
病院(病棟)によっては、休日やプライベートの時間が取りにくく、心身のリフレッシュが難しい状況です。
生活習慣は、ストレスとも関連があるため、こうした不規則な勤務体制は、看護師のストレスに直接影響する要因です。
感情労働の負担
患者さんの不安や苦痛に寄り添い、精神的なサポートを行うことは、看護師にとって重要な役割です。
しかし、常に感情をコントロールし、患者さんに共感することは、看護師の精神的負担を高める主要な要因の一つです。
加えて、ときには患者さんの「死」に直面するなど、仕事で感情を揺さぶられる場面も発生することもあります。
上記のような要因が考えられますが、実際に、ドクタートラストで受検した「医療業」の傾向を見ると、「仕事の質的負担」や「仕事のコントロール度」、「職場の対人関係」、「身体的負担」、「情緒的負担」などで不良な傾向が伺えます。
仕事の性質上改善が難しい場合もありますが、こうしたストレスを放置すれば、高ストレス者の増加につながることが容易に想像できます。
ストレスへの対処法
では、看護師のストレスを軽減するためには、何ができるでしょうか。
看護師がストレスを軽減するためには、職場全体での取り組みと、個人のセルフケアが重要です。
職場での取り組み
人員配置の見直しや業務分担の改善など、労働環境の整備が重要です。
しかし、人員不足の問題から改善が難しい場合もあるでしょう。
その場合は、上司や同僚からのサポートなど、ストレスを緩和する要因を増やしていただくことが重要です。
上司や同僚とのコミュニケーションを円滑にし、相談しやすい雰囲気を作るために何ができるか、上司からのフィードバックや承認が適切に行われているかなど、看護師のストレスを緩和するための取り組みを考えるのがおすすめです。
また、メンタルヘルスに関する研修やカウンセリングの機会を設けるなど、メンタルヘルスケアの充実も求められます。
周囲へSOSを出せる環境づくりも、組織の重要な役割の一つです。
個人のセルフケア
業務の性質上、大きなストレスが発生しやすい状況下で働いていることを一人ひとりが自覚し、自分のストレスをコントロールするためのセルフケアを行うことが重要です。
十分な睡眠や休息、バランスの取れた食事に留意するなどの生活習慣や、趣味や運動など、リフレッシュできる時間を持つことも大切です。
実際にドクタートラストのストレスチェックでは、「睡眠」や「飲酒」などの調査結果において、良い生活習慣を送れている人のほうが、高ストレス者率が低いことが分かっています。
自分自身のストレスに向き合う適切な個人のセルフケアは、看護師のストレス軽減に有効です。
看護師のストレス対策、病院・企業が今すぐできること
看護師は、人々の健康と命を守るためになくてはならない存在です。
その貢献に感謝するとともに、看護師が心身ともに健康で働き続けられるよう、社会全体でサポートしていくことが大切です。
組織としてできること
- 人員配置・業務分担の見直し
- 相談しやすい職場風土の醸成
- メンタルヘルス研修・カウンセリング機会の提供
- ストレスチェックの集団分析による課題の可視化
個人としてできること
- 十分な睡眠・休息の確保
- バランスのとれた食事
- 趣味・運動などリフレッシュできる時間の確保
<参考>
・ 公益社団法人日本看護協会
・厚生労働省「令和5年度過労死等の労災補償状況を公表します」
Q&A(よくある質問)
Q1. 看護師の職場における健康リスクはどのくらい高いですか?
A. ドクタートラストが約47万人を対象に実施した2023年度ストレスチェックの分析では、「医療、福祉」は総合健康リスクで全業種中3位、仕事の負担リスクでは全業種中2位という結果でした。医療業の高ストレス者率は15.7%で全業種平均(15.2%)とほぼ同水準ですが、精神障害による労災請求件数は他業種より多く、潜在的なリスクの高さが示されています。
Q2. 看護師がストレスを感じやすい主な原因は何ですか?
A. 看護師のストレス要因は主に4つです。①多岐にわたる業務と医療ミスが許されない責任の重さ、②患者・家族・医師・同僚など複雑な人間関係、③夜勤・交代制勤務による不規則な生活リズム、④患者の感情に寄り添い続ける感情労働による精神的負担です。ドクタートラストのデータでも、医療業では「仕事の質的負担」「仕事のコントロール度」「職場の対人関係」「身体的・情緒的負担」で不良傾向が見られます。
Q3. 病院・企業が看護師のストレス対策として取り組めることは何ですか?
A. 組織としての取り組みは4つあります。①人員配置・業務分担の見直し、②相談しやすい職場風土の醸成と上司からの適切なフィードバック、③メンタルヘルス研修・カウンセリング機会の提供、④ストレスチェックの集団分析による課題の可視化と組織的な改善です。人員不足で環境改善が難しい場合でも、サポート体制の強化だけでストレスを緩和できることがあります。
Q4. 看護師個人がストレスを軽減するためにできることは何ですか?
A. 個人のセルフケアは、看護師のストレス軽減に有効です。具体的には①十分な睡眠・休息の確保、②バランスのとれた食事、③趣味・運動などリフレッシュできる時間の確保の3点が基本となります。ドクタートラストのデータでは、良い生活習慣を送っている人ほど高ストレス者率が低い傾向があり、セルフケアの効果が数値として裏付けられています。
Q5. ストレスチェックの集団分析は看護師のメンタルヘルス対策に活用できますか?
A. はい、活用できます。集団分析を「不調者を見つけるため」だけでなく「組織の負荷構造を見直す機会」として活用することが重要です。「仕事の質的負担」「職場の対人関係」など医療現場に特有の課題を部署・職種単位で可視化し、組織的な改善策につなげることが可能です。

