現在、従業員数50名以上の事業場で実施が義務づけられているストレスチェックに対して「中小企業でも義務なの?」「実施しなかった場合に罰則はあるの?」といった疑問をお持ちのご担当者もいるのではないでしょうか。そこで今回はストレスチェック制度について、その目的や実施義務の範囲、罰則などについて解説します。
ストレスチェック制度とは?
心理的な負担の程度を把握するための検査(以下、ストレスチェック)は、労働者がストレスの状況を把握しセルフケアにつなげること、企業の職場環境改善に役立てることを目的としています。
また、ストレスチェックの結果、「高ストレス者」とされた労働者から申し出があった場合は、産業医などの医師による面接指導を行うこととされています。
つまり、ストレスチェックは、労働者のメンタルヘルス不調を未然に防止する、一次予防を目的として行われます。
ストレスチェック制度導入の背景
では、ストレスチェックはなぜ導入されたのでしょうか。
ストレスチェック制度は、2015年12月1日から50名以上の事業所に実施が義務づけられました。
その背景には、仕事による強いストレスが原因で精神障害を発症し、労災認定される労働者が増加傾向にあること、仕事や職業生活に関して強い不安・悩みを感じている労働者が半数以上となっていることがあります。
ちなみに、厚生労働省の令和6年「労働安全衛生調査(実態調査)」によると、現在の仕事や職業生活に関することで、強い不安やストレスとなっていると感じる事柄がある労働者の割合は68.3%となっており、多くの労働者が何らかの悩みやストレスを抱えながら働いていることがわかります。
そのような背景のもと、労働者のメンタルヘルス不調を未然に防止するためのしくみとして導入されたのが、ストレスチェックです。
現在ストレスチェックの実施が義務づけられるのは、常時雇用する労働者が50名以上の事業場です。これは、中小企業であっても変わりません。事業場とは、原則的に、同じ場所にある職場、たとえば、店舗や工場、支店、営業所などの組織のことをいいます。
なお、50名未満の事業場については、2025年5月14日に「労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律」の公布により、50名未満の事業場に対しても3年以内の義務化が決定しました。そのため、今後は従業員の人数に関わらず、全ての企業で年1回のストレスチェック実施が義務となる見通しです。
では、ストレスチェックの実施に関する罰則はあるのでしょうか。
ストレスチェックの実施義務がある事業場で、未実施の場合でも罰則はありません。
しかし、ストレスチェック実施後は、所轄の労働基準監督署への報告義務があり、それを怠ると罰則が課せられる可能性があります。(労働安全衛生法第120条)
また、未実施に対する罰則はありませんが、ストレスチェック等を行わずに、従業員の健康の把握や対策を怠った場合に、安全配慮義務違反に問われる可能性もあります。
実施義務がある事業場では実施と報告を忘れずに行うようにしましょう。
中小企業のストレスチェック実施は企業規模で異なる
このように、中小企業であっても、常時50名以上の労働者を使用する事業場であれば実施義務があります。
なお、厚生労働省「ストレスチェック制度 の実施状況(令和5年)」によると、ストレスチェック制度を実施した事業場の割合は、10~29名で33.1%、30~49名で41.8%、50~99名で74.5%、100~299名で91.7%、300~999名で98.1%、1000名以上で99.9%と報告されており、事業規模が小さいほどストレスチェック実施報告書の未提出率が高くなっていますが、現時点では50名未満で実施義務がなくても、すでに実施をしている企業もあるようです。
中小企業がストレスチェックを実施する際は助成金を活用しよう
初めてストレスチェックを実施する際には、費用の確保が重要となりますよね。
そこで活用できるのが、独立行政法人労働者健康安全機構が厚生労働省の産業保健活動総合支援事業の一環として行っている、団体経由産業保健活動推進助成金です。
この助成金制度は、中小企業や労災保険の特別加入者を支援する団体等が、傘下の中小企業等に対し、産業医、保健師等の専門職の他、産業保健サービスを提供する事業者と契約し、産業保健サービスを提供した場合、その費用の一部を助成するものです。
詳しい要件や助成額、手続き等については、独立行政法人労働者健康安全機構のホームページで確認できますので、チェックしてみてはいかがでしょうか。
まとめ
今回は、中小企業のストレスチェックについてお伝えしました。
初めてストレスチェックを実施する企業様では、対象者や実施の流れなどでご不安を抱えている方もいるかと思います。ドクタートラストでは、ストレスチェックの実施から職場環境の改善までトータルサポートを行っていますし、ストレスチェックの集団分析を活用した独自の人材育成・組織開発コンサルティングサービス「STELLA(ステラ)」をご提供しています。
ぜひ一緒に高ストレス者軽減、生産性の高い職場構築について考えていきましょう!
<参考>
厚生労働省「ストレスチェック制度の実施状況(令和6年)」
よくある質問(Q&A)
Q1: ストレスチェック制度とは何ですか?
A: ストレスチェック制度とは、労働者の心理的な負担の程度を把握するための検査制度です。労働者がストレスの状況を把握しセルフケアにつなげること、企業の職場環境改善に役立てることを目的としています。結果、「高ストレス者」とされた労働者から申し出があった場合は、産業医などの医師による面接指導を行います。つまり、労働者のメンタルヘルス不調を未然に防止する一次予防を目的とした制度です。
Q2: 中小企業でもストレスチェックは義務ですか?
A: 中小企業でも、常時雇用する労働者が50名以上の事業場であれば、年1回のストレスチェック実施が義務づけられています。企業規模に関わらず、50名以上の事業場は対象です。なお、2025年5月に法改正が公布され、50名未満の事業場に対しても3年以内の義務化が決定しました。そのため、今後は従業員の人数に関わらず、全ての企業で年1回のストレスチェック実施が義務となる見通しです。
Q3: ストレスチェックを実施しなかった場合、罰則はありますか?
A: ストレスチェックの実施義務がある事業場で未実施の場合でも、直接的な罰則はありません。しかし、ストレスチェック実施後は所轄の労働基準監督署への報告義務があり、それを怠ると労働安全衛生法第120条により罰則が課せられる可能性があります。また、未実施に対する罰則はありませんが、従業員の健康の把握や対策を怠った場合、安全配慮義務違反に問われる可能性もあります。
Q4: 50人未満の事業場でもストレスチェックは義務化されますか?
A: はい、2025年5月14日に「労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律」が公布され、50名未満の事業場に対しても3年以内の義務化が決定しました。つまり、2028年頃までには全ての企業規模でストレスチェックの実施が義務化される見通しです。50名未満の事業場でも、今から準備を進めておくことをおすすめします。
Q5: 中小企業がストレスチェックを実施する際に使える助成金はありますか?
A: はい、独立行政法人労働者健康安全機構が行っている「団体経由産業保健活動推進助成金」を活用できます。これは、中小企業や労災保険の特別加入者を支援する団体等が、傘下の中小企業等に対し、産業医、保健師等の専門職や産業保健サービスを提供する事業者と契約し、産業保健サービスを提供した場合、その費用の一部を助成するものです。詳細は独立行政法人労働者健康安全機構のホームページで確認できます。
Q6: ストレスチェックの報告義務とは何ですか?
A: ストレスチェック実施義務がある事業場(常時50名以上)は、ストレスチェック実施後、所轄の労働基準監督署に報告書を提出する義務があります。この報告を怠ると、労働安全衛生法第120条により罰則が課せられる可能性があります。実施義務がある事業場では、実施と報告を忘れずに行うようにしましょう。なお、50名未満の事業場については、義務化後も報告義務は課されない方針です。


