仕事で失敗したとき、必要以上に自分を責めてしまう。周囲からの評価が気になり、思うように行動できない。そんな経験はありませんか?
自分に自信が持てなかったり、自分のことを肯定的に捉えられなかったりすると、日々の仕事や人間関係でストレスを感じやすくなることがあります。
今回は、自己肯定感とストレスの関係を考えながら、今日からできるセルフケアについて考えていきます。
自分を「きらい」と答えた人の約半数が高ストレス者
ドクタートラストの全国データ(2025年、回答者数183,710人)によると、「あなたは自分のことが好きですか」という質問に対して自分を「きらい」と回答した人は、4.3%で、そのうち51.3%が高ストレス者に該当しました。
一方、自分を「とても好き」と回答した人の高ストレス者率は7.7%です。
この結果では、自分を「きらい」と回答した人の高ストレス者率は、「とても好き」と回答した人の約6.7倍に上ります。
自分自身への評価とストレスの状態には、大きな差が見られました。
もちろん、この結果だけで「自分を嫌いだからストレスが高くなる」と断定することはできません。
仕事の負担や人間関係などの要因が自己評価に影響している可能性もあれば、ストレスが蓄積することで、自分を肯定的に捉えにくくなっている可能性もあります。
しかし、自己肯定感に目を向けることは、ストレスを理解するための一つの手掛かりになります。
自己肯定感とストレスには、どのような関係がある?
自己肯定感とは、自分自身を価値あるものとして尊重する感覚のことです。
自分自身に対する評価を表す「自尊感情(self-esteem)」とストレスとの関係については、さまざまな研究がなされています。
例えば、Tang氏の研究では、自尊感情とストレスの関係が検討されています。
研究では、個人的自尊感情が高い人ほど、急性ストレス時の唾液中コルチゾール反応が低い傾向が見られました。
また、慢性的なストレスについては、自尊感情が高い人ほど、本人が感じるストレスが低い傾向が示されました。
一方、慢性的なストレスの生理的指標である毛髪中コルチゾール濃度との関連は認められませんでした。
自尊感情の低さがストレスにつながると断定はできませんが、自分自身をどのように評価しているかは、本人が感じる精神的負荷や、その生理的反応と関連している可能性があります。
自分を否定する気持ちが、ストレスを大きくすることも
では、自己肯定感が低いと、日常のどのような場面でストレスを感じやすくなるのでしょうか。
いくつかの場面を考えてみましょう。
失敗を自分の価値と結び付けてしまう
例えば、仕事でミスをしたとき、「確認が足りなかった。次から気を付けよう」と考えられれば、改善策を見つけやすくなります。
しかし、「自分は仕事ができない」「自分は何をやっても駄目だ」と考えてしまうと、一つの失敗が自分自身への否定につながります。
必要以上に落ち込んだり、失敗を何度も思い返したりしてしまうと、気持ちの切り替えが難しくなるでしょう。
周囲の評価を気にしすぎてしまう
「期待に応えなければならない」「迷惑をかけてはいけない」と考えるあまり、頼まれた仕事を断れなかったり、完璧に仕上げようと無理を重ねたりすることがあります。
自分の限界よりも周囲の期待を優先し続けると、心身の不調を引き起こしてしまうこともあるでしょう。
周囲に助けを求めにくくなる
「こんなことも分からないと思われたくない」「相談するのは自分の能力が足りないからだ」と感じると、悩みを一人で抱え込んでしまいがちです。
本来であれば早めに相談することで解決できる問題も、対応が遅れることで複雑化し、ストレスが大きくなる可能性があります。
自己肯定感を高めるために、今日からできること
まずは、自分を必要以上に否定しない習慣を身に付けることから始めてみましょう。
事実と自分の解釈を分けて考える
仕事でミスをしたとき、「自分は何をやっても駄目だ」と考えてしまったら、一度立ち止まってみましょう。
「確認不足でミスが起きた」というのは事実ですが、「自分は何をやっても駄目だ」というのは、その出来事に対する解釈です。
事実と解釈を分けることで、自分を責めるだけで終わらず、具体的な改善策を考えやすくなります。
できたことにも目を向ける
私たちは、失敗や不足している部分には目が向きやすい一方、できていることは見過ごしがちです。
「予定どおりに仕事を終えた」「分からないことを確認できた」「忙しい中でも同僚を手伝った」など、小さなことでも構いません。
その日にできたことを振り返る習慣をつくると、自分の行動を肯定的に捉えるきっかけになります。
自分にも思いやりのある言葉をかける
例えばみなさんは、同僚が失敗して落ち込んでいたら、「誰にでも失敗はある」「次に生かせば大丈夫」と声をかけるのではないでしょうか。
しかし、自分自身には「どうしてこんなこともできないのか」と厳しい言葉を向けてしまうことがあります。
自分にも同じように、思いやりのある言葉をかけてみましょう。
一人で抱え込まず周囲に相談する
悩みを誰かに相談できるということは、とても大切なことです。
自分だけでは気付かなかった解決策が見つかったり、状況を整理できたりすることもあります。
仕事の進め方に迷ったときは上司や同僚に確認する、負担が大きいときは業務量について相談するなど、具体的な行動に移してみましょう。
まずは、自分がどのような場面でストレスを感じやすいのかを振り返り、失敗したときにも自分のすべてを否定しないこと、必要なときには周囲の力を借りることを意識してみましょう。
一人ひとりが自分の状態を理解し、安心して働ける職場環境を整えていくことが、ストレスの軽減にもつながります。
ぜひ今回ご紹介したセルフケアを参考にしてくださいね。
・ こころの耳「セルフエスティーム」
・ Tang, X. et al.「The role of personal, relational, and collective self-esteem in predicting acute salivary cortisol response and perceived stress」(『Appl Psychol Health Well Being』2024年16巻3号1386~1402頁)
よくある質問(Q&A)
Q1. 自己肯定感とストレスにはどのような関係がありますか?
A1. 自分を「きらい」と回答した人は「とても好き」と回答した人に比べて高ストレス者の割合が約6.7倍高いというデータがあります。また、自尊感情が高い人ほど急性ストレス時の salivary コルチゾール反応が低い傾向や、本人が感じる慢性的なストレスが低い傾向が示されています。
Q2. 自己肯定感が低いと、どのような場面でストレスを感じやすくなりますか?
A2. 主に「失敗を自分の価値と結び付けてしまい『自分は何をやっても駄目だ』と否定してしまう場面」「周囲の評価を気にしすぎて自分の限界より期待を優先してしまう場面」「『能力が足りないと思われたくない』と感じて周囲に助けを求めにくくなる場面」などが挙げられます。
Q3. 仕事でミスをしたとき、自分を責めすぎないためのコツはありますか?
A3. 「事実」と「自分の解釈」を分けて考えることが有効です。「確認不足でミスが起きた」という「事実」と、「自分は何をやっても駄目だ」という「解釈」を切り離すことで、自分を責めるだけでなく具体的な改善策を考えやすくなります。
Q4. 日常生活で自己肯定感を高めるために、今日からできるセルフケアには何がありますか?
A4. 「事実と自分の解釈を分けて考えること」「その日にできた小さなことにも目を向けること」「同僚に声をかけるように自分にも思いやりのある言葉をかけること」「一人で抱え込まず周囲に相談すること」の4つが挙げられます。
Q5. 論文や研究で示されている「自尊感情(self-esteem)」とコルチゾール(ストレス指標)の関係について教えてください。
A5. Tang氏らの研究によると、個人的自尊感情が高い人ほど急性ストレス時の唾液中コルチゾール反応が低い傾向が見られました。一方で、慢性的なストレスの生理的指標である毛髪中コルチゾール濃度との関連は認められなかったとされています。

