研究レポート

13.5%の事業所で発生!他人事ではない「休職」について

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現在、休職者がどのくらいいるかご存じでしょうか?
厚生労働省の調査によると、過去1年間(2024年11月1日から2025年10月31日までの期間)にメンタルヘルス不調により連続1か月以上休業した労働者、または退職した労働者がいた事業所の割合は13.5%となっています。
また、メンタルヘルス不調により連続1か月以上休業した労働者の割合は0.6%、退職した労働者の割合は0.2%という結果が出ています。
これらの数字が示す通り、今やメンタル不調とそれに伴う休職は決して他人事ではありません。
だからこそ、突然の休職の申し出を受けた際に焦らないためにも、企業としての正しい対応を知っておくことが必要不可欠です。

休職者が出たときにとるべき対応

従業員から休職の申し出があった場合、企業は本人の健康回復を最優先しつつ、将来的な復職を見据えたサポートを行う必要があります。
具体的には、以下の3つの段階的な対応が求められます。

①定期的な面談や休職計画の共有

休職手続きの第一歩は、精神科や心療内科の主治医から休職の必要性が記載された診断書をもらうことです。
企業は提出された診断書と、自社の就業規則・規定に則って適切な休職期間を決定します。
休職初期は心身のエネルギーが枯渇している状態であるため、まずは業務から完全に離れて自宅療養に専念してもらうことが最優先です。

しかし、ただ休ませて放置すればよいというわけではありません。
本人の体調が少し落ち着いてきた段階で、人事担当者や産業医による定期的な面談を実施し、休職計画の共有を行うことが重要です。休職中の連絡手段や頻度を取り決め、「復職に向けて会社はしっかりサポートする」という姿勢を伝えることで本人の不安を取り除きます。

休職期間の計画や目的を共有することで、「ただ休むだけではない」意味のある休職期間になっていくでしょう。

②リワークなどの推奨

自宅療養を経て症状が安定してきたとしても、いきなり元の職場でフルタイム勤務を再開するのは非常にハードルが高いものです。
自宅療養中の穏やかな生活と、復帰後のストレスの多い職場環境とのギャップを減らすために非常に有効なのが、「リワーク(職場復帰支援プログラム)」の活用です。

リワークプログラムは、医療機関や地域障害者職業センターなどで実施されており、決まった時間に施設へ通うことで通勤の訓練となり、生活リズムを立て直すことができます。
また、オフィスワークに近い環境で、グループワークを通じて対人関係のスキルをリハビリするほか、認知行動療法などの心理療法によって、ストレスへの対処法(認知トレーニング)の習得が可能です。
施設からの客観的な評価を得られるため、企業側にとっても安全な復職時期を見極める良い目安となります。

③慣らし勤務の推奨

リワーク等を経て主治医から「復職可能」の診断が出た後も、慎重な対応が必要です。
復帰直後から以前と同じ業務量や労働時間を課してしまうと、再発のリスクが急激に高まります。
そこで有効なのが「慣らし勤務(試し出勤制度)」です。

初めは半日勤務や週数日の出勤からスタートし、業務内容も負担の少ない定型業務などに限定します。
定期的な面談で本人の疲労度を確認しながら、数週間から数ヶ月かけて徐々に勤務時間と業務の難易度を通常に戻していきます。
このように徐々に心身を職場環境に慣らしていくことで、再休職を未然に防ぎ、その後の職場への定着率が劇的に上昇するでしょう。

休職者対応の事例

ここで、企業の対応によってその後の経過が大きく変わった事例をご紹介します。

ある企業では過去に、自宅療養のみで症状が良くなり主治医から「復帰可能」と診断された従業員が、そのままフルタイムで復職したケースがありました。
しかし、体力や生活リズムが完全には戻っておらず、職場でのコミュニケーションに再びプレッシャーを感じたことで、わずか数ヶ月で再休職に至ってしまいました。

この反省を活かし、次にメンタル不調で休職したAさんのケースでは、会社側が積極的にリワークの利用を推奨しました。
Aさんは数ヶ月間リワーク施設に通い、認知行動療法を通じて自身の「一人で仕事を抱え込みすぎる」という思考の癖に気づき、周囲にSOSを出すスキルを習得しました。
さらに復職時には、会社が1ヶ月間の「慣らし勤務」を実施しました。
時短勤務からスタートし、上司との定期的な面談で業務量を調整しながら徐々に体を慣らしていきました。

結果としてAさんは再休職することなく、現在も元気に職場で活躍し続けています。
この事例から、自宅療養だけでなく、リワークによる準備と段階的な復職支援を活用することがいかに重要かがわかります。

まとめ

従業員のメンタルヘルス不調による休職は、どの企業にも起こり得る身近な課題です。
休職者が出た際は、就業規則に則った休職手続きと自宅療養の確保はもちろんのこと、「定期的な面談と計画の共有」「リワークの活用」「復職時の慣らし勤務」といった段階的で計画的なサポートが不可欠です。
企業と従業員が一体となって復職へのプロセスを丁寧に歩むことで、再休職の悲劇を防ぎ、貴重な人材が健康に長く働き続けられる職場環境を実現につながるでしょう。

よくある質問(Q&A)

Q1: 休職者が出たとき、どのような順で対応すればよいですか?

A: 「定期的な面談と休職計画の共有」「リワークの活用」「慣らし勤務」の3段階で進めるのが基本です。企業は本人の健康回復を最優先にしつつ、将来の復職を見据えた支援を行います。休職初期は自宅療養に専念してもらい、体調が落ち着いてきた段階で面談を行い、症状が安定したらリワーク、主治医から復職可能と診断された後は慣らし勤務へと進めます。

Q2: メンタルヘルス不調による休職や退職は、どのくらいの事業所で発生していますか?

A: 13.5%の事業所で発生しています。厚生労働省の「令和7年労働安全衛生調査(実態調査)」によると、2024年11月1日から2025年10月31日までの1年間に、メンタルヘルス不調で連続1か月以上休業または退職した労働者がいた事業所の割合は13.5%でした。連続1か月以上休業した労働者の割合は0.6%、退職した労働者の割合は0.2%です。休職は他人事ではないため、企業として正しい対応を知っておくことが欠かせません。

Q3: 休職の手続きは、何から始まりますか?

A: 精神科または心療内科の主治医が、休職の必要性を書いた診断書を出すところから始まります。企業は、その診断書と就業規則・規定に基づいて休職期間を決めます。休職初期は心身が消耗しているため、まずは業務から離れて自宅療養に専念してもらうことが最優先です。

Q4: 休職中の従業員との面談は、どのように行えばよいですか?

A: 体調が落ち着いてきた段階で、人事担当者や産業医による定期的な面談を行い、休職計画を共有します。面談では連絡手段や頻度を取り決め、「復職に向けて会社はしっかりサポートする」という姿勢を伝えて、本人の不安を和らげます。計画や目的を共有することで、休職期間を意味のあるものにできます。

Q5: リワークとは何ですか?

A: リワークとは、職場復帰支援プログラムのことです。医療機関や地域障害者職業センターなどで行われ、決まった時間に施設へ通うことで通勤の訓練になり、生活リズムを整えられます。オフィスワークに近い環境でのグループワークで対人関係のスキルを練習でき、認知行動療法などの心理療法でストレスへの対処法を身につけられます。施設からの客観的な評価は、企業にとって安全な復職時期を見極める目安になります。

Q6: 慣らし勤務(試し出勤制度)とは何ですか?

A: 復職にあたって、勤務時間と業務の難易度を段階的に通常に戻していく取組です。最初は半日勤務や週に数日の出勤から始め、業務も定型業務など負担の少ないものに限定します。定期的な面談で疲労度を確認しながら、数週間から数ヶ月かけて通常に戻していきます。主治医から「復職可能」と診断された後も慎重な対応が必要で、そのために活用されるのが慣らし勤務です。

Q7: 再休職を防ぐには、どうすればよいですか?

A: 自宅療養だけで復職させず、リワークによる準備と、慣らし勤務による段階的な復職支援を組み合わせることが重要です。記事の事例では、自宅療養のみでフルタイムに復職した従業員が数ヶ月で再休職しました。その反省から、次に休職したAさんにはリワークの利用を勧め、復職時に1ヶ月間の慣らし勤務を実施した結果、再休職せず現在も職場で活躍しています。

<参考>
厚生労働省「令和7年労働安全衛生調査(実態調査)結果の概要」
一般社団法人日本うつ病リワーク協会「リワークプログラムとは」

ABOUT ME
中西りか
【保有資格】精神保健福祉士 【コメント】大学卒業後、精神保健福祉士としてメンタルヘルス業界に従事してまいりました。大学病院の精神科デイケアで臨床の基礎を学び、メンタルクリニックでは精神保健福祉士としての専門性を磨いてまいりました。その後、リワーク(復職支援施設)での経験を経て、より早い段階でメンタル不調を防ぐことの重要性を実感し、産業分野へと軸足を移しました。「健康に長く働き続けるには」を問い続けながら、皆さまの健康を支える一助となれるよう取り組んでまいります。