近年、ストレスチェックの集団分析を実施する中で、以前よりも強く感じることがあります。
それは、「管理職・中間層の疲弊」が非常に目立つようになっている、ということです。
実際に、現場の管理職の方々からは、以下のような声を聞く機会が増えています。
「部下のケアで手一杯」
「上からの要求と現場の板挟み」
「昔のマネジメントが通用しない」
「自分が相談できる相手がいない」
一方で、こうした方々は責任感が強く、真面目な方が多いため、「自分の努力不足」として抱え込んでしまう傾向があります。
しかし、本当に“個人の問題”だけなのでしょうか。
管理職は「支える側」でありながら、「最も孤立しやすい層」
現在の管理職には、多くの役割が求められています。
業績管理や人材育成、ハラスメント防止、メンタルヘルス対応、多様な働き方への配慮など。
かつてよりも「人への配慮」が求められる一方で、業務量そのものが減っているわけではありません。
さらに、現場では慢性的な人手不足や属人化も進んでおり、プレイヤーとしての役割を兼務しているケースも少なくありません。
つまり現在の管理職は、「成果を出しながら、人も支えなければならない」という、非常に難しいポジションに置かれているのです。
ストレスチェックの結果でも、以下の項目について、管理職層で不良傾向が出るケースは珍しくありません。
- 役割葛藤
- 情緒的負担
- 周囲のサポート不足
- 働きがいの低下
これは、「弱い管理職が増えた」のではなく、環境そのものが複雑化していることの表れとも言えるでしょう。
「頑張り方」を変える視点
管理職が孤立しやすい構造がある中で、重要なのは、「もっと頑張る」ではなく、“頑張り方を見直す”視点です。
そのヒントのひとつとして、近年注目されているのが「ジョブ・クラフティング」という考え方です。
ジョブ・クラフティングとは、自分の仕事の捉え方や進め方、人との関わり方を主体的に調整し、仕事の意味ややりがいを再構築していく考え方です。
たとえば、以下のような小さな工夫も、その一歩になります。
- すべてを一人で抱え込まず、メンバーに任せる
- 「管理する」より「支援する」に意識を変える
- 苦手業務を整理し、周囲に相談する
- 自分が価値を感じる仕事を再確認する
https://www.stresscheck-dt.jp/stella/jobcrafting1/
また、「キャリアアンカー」のように、自分が仕事で大切にしたい価値観を見直すことも有効です。
「自分は何を大切にしたいのか」
「どんな時にやりがいを感じるのか」
これらを整理することで、“無理をしている状態”に気づきやすくなるからです。
職場環境改善は「管理職支援」でもある
職場環境改善というと、一般社員向けの施策として捉えられることがあります。
しかし実際には、管理職が健全に働ける環境を整えることこそ、組織全体の安定につながります。
たとえば、管理職同士が相談できる場をつくったり、「完璧な管理職」を求めすぎない文化を醸成したりするだけでも、現場の空気は変わります。業務の属人化を減らし、評価だけでなく支援の仕組みを整えていくことも、結果的に部下支援の質向上につながっていきます。
管理職が疲弊した状態では、組織の空気も硬直しやすくなります。
だからこそ、ストレスチェックや集団分析を「不調者を見つけるため」だけではなく、「組織の負荷構造を見直す機会」として活用していくことが重要なのではないでしょうか。
おわりに
真面目な人ほど、「自分が頑張れば何とかなる」と考えがちです。
しかし、現在の職場課題の多くは、個人の努力だけでは解決できない構造的な問題でもあります。
だからこそ必要なのは、“誰かを責めること”ではなく、「働き方そのものを見直す視点」です。
ストレスチェックや職場環境改善の取り組みが、そのきっかけのひとつになればと思います。
よくある質問
Q1. 管理職のストレスチェック結果に、どのような傾向がみられますか?
A. 管理職層では「役割葛藤」「情緒的負担」「周囲のサポート不足」「働きがいの低下」といった項目で不良傾向が出るケースが珍しくありません。これは管理職個人の問題ではなく、求められる役割が複雑化している職場環境の表れとも言えます。
Q2. ジョブ・クラフティングとは何ですか?
A. 自分の仕事の捉え方や進め方、人との関わり方を主体的に調整し、仕事の意味ややりがいを再構築していく考え方です。「もっと頑張る」ではなく「頑張り方を見直す」視点として、管理職の疲弊対策にも注目されています。
Q3. 管理職支援として、企業にできることはありますか?
A. 管理職同士が相談できる場をつくること、「完璧な管理職」を求めすぎない文化の醸成、業務の属人化を減らすこと、評価だけでなく支援の仕組みを整えることなどが有効です。管理職が健全に働ける環境を整えることが、組織全体の安定にもつながります。
Q4. ストレスチェックの集団分析を、管理職支援にどう活用できますか?
A. 集団分析を「不調者を見つけるため」だけでなく、「組織の負荷構造を見直す機会」として活用することが重要です。管理職層のデータを分析することで、どの部署や層に負荷が集中しているかを把握し、組織的な改善策を検討するきっかけになります。
Q5. 管理職が「自分の努力不足」と抱え込んでしまう背景は何ですか?
A. 責任感が強く真面目な方ほど、職場課題を個人の問題として捉えがちです。しかし現在の職場課題の多くは、個人の努力だけでは解決できない構造的な問題でもあります。まずはその認識を持つことが、適切なサポートを求める第一歩になります。

