近年、職場のメンタルヘルス対策は企業の重要課題となっています。
その最前線に立つのが管理職であり、部下の変化にいち早く気づけるかどうかが、チーム全体の生産性や雰囲気を左右します。
部下の状態や変化にいち早く気づけるかどうかは、チーム運営にも影響していくでしょう。
この記事では、管理職が今日から実践できるメンタルヘルスケアのポイントや、上司として避けたい行動をわかりやすく紹介します。
なぜ管理職のメンタルヘルスケアが重要なのか
こんな場面に出くわしたことがある方もいらっしゃるかもしれませんが、部署のメンバーが1人不調になると、他のメンバーに業務が分散し、仕事量が増えます。
忙しさからコミュニケーションが減り、さらに雰囲気が悪化するという、こうした負の連鎖は珍しくありません。
また、管理職の一言は良くも悪くも影響力が大きいものです。
「最近どう?」という一声が安心材料になることもあれば、反対に「そんなの気にするなよ」という一言が、部下に“わかってもらえない”と感じさせてしまうこともあります。
厚生労働省の「令和5年 労働安全衛生調査」によると、過去1年間にメンタルヘルス不調により連続1カ月以上休業した労働者がいた事業所の割合は10.4%に上ります。
つまり、約10社に1社で長期休業者が発生しているのが現状です。
管理職の適切な対応により、早期発見・早期対応ができるケースも多く、日頃の観察と声かけが重要な役割を果たします。
さらに見落とされがちなのが、管理職自身のメンタルです。
忙しさのあまり、いつの間にか心がすり減っていることもあります。
部下の小さな変化に気づくことも大切ですが、部下への配慮や適切な判断を行うためにも、まずは管理職自身のメンタルヘルスを整えることが、チームを支えるうえでとても重要です。
管理職が身につけるべきメンタルヘルスケアスキル
部下の変化に気づく観察力
メンタル不調のサインは、仕事のミスや遅れだけではありません。
- 朝の挨拶が小さくなる
- メールやチャットの返信が急に遅くなる
- 雑談に入らなくなる
- 昼食をひとりで済ませるようになる
こうした“いつもと違う様子”に気づくには、普段からのコミュニケーションが欠かせません。
日頃から会話をしたり、様子の観察を積み重ねることで、変化の「前」と「後」が見えやすくなります。
傾聴力
相談を受けたとき、管理職として何か“正しい答え”を返さないといけないと思いがちですが、まずはしっかり部下の話に耳を傾けましょう。
- 遮らずに最後まで聞く
- 相手の感情に寄り添う
- すぐにアドバイスを出さない
この3つだけでも、部下は話しやすくなります。
逆に、「そんなの気にしすぎだよ」「みんなやってるよ?」といった言葉は、部下の気持ちを閉ざす原因になるので控えましょう。
コミュニケーションスキル
信頼関係が築けているチームでは、部下は悩みや失敗も伝えやすくなります。
そのためには、管理職が対話をしようとする姿勢が必要です。
たとえば、週1回の1on1ミーティングを設定し、業務報告だけでなく「最近、仕事の負荷はどう?」「何か困っていることはない?」と具体的に聞くことで、部下は悩みを打ち明けやすくなります。
リモートワークで業務をしている場合は、表情が見えにくいため、チャットでの「お疲れさま」「大丈夫?」といったちょっとした声かけを増やすなど、「忙しそうだから声をかけづらい」と思わせない姿勢も大切です。
適切な相談対応
メンタル不調の可能性を感じたら、いきなり深堀りするのではなく、丁寧に状況を確認することから始めましょう。
- 本人のペースを尊重して聴く
- 無理に励まさない
- 必要に応じて産業医・社内相談窓口を案内する
- 守秘義務を徹底する
管理職が抱え込みすぎる必要はありません。
専門家につなぐのも大切な役割です。
管理職が避けるべきNG行動
部下を追い詰める原因になりやすい行動には、次のようなものがあります。
- 声を荒げる、感情的になる
- ミスを人前で指摘する
- 変化に気づいても「様子見」で放置する
特に、意図せずともパワハラに該当する言動は厳禁です。
職場の空気は一つの言動で一気に悪化します。
まとめ
部下の小さな変化に気づき、話を聴き、必要なときには専門家につなぐこと。
これらは特別なスキルではなく、管理職としての基本的な姿勢です。
今日からできる小さな一歩を積み重ねることで、職場の雰囲気は確実に変わっていきます。
まずは「最近どう?」という一声から始めてみませんか?
部下の変化に気づき、話を聴き、必要なときには専門家につなぐ。
これが管理職としてできる、最も効果的なメンタルヘルスケアです。
「このチームなら安心して働ける」と思える環境について、ぜひ管理職として考えてみてください。
よくある質問
Q1. 部下のメンタル不調にはどんなサインがありますか?
A. 朝の挨拶が小さくなる、メール返信が遅くなる、雑談に入らなくなるなど、「いつもと違う様子」が主なサインです。
Q2. 部下から相談を受けたとき、管理職はどう対応すべきですか?
A. まずは遮らずに最後まで話を聞き、相手の感情に寄り添いましょう。無理に励まさず、必要に応じて産業医や社内相談窓口を案内することが大切です。
Q3. 管理職として避けるべき行動は何ですか?
A. 声を荒げる、ミスを人前で指摘する、変化に気づいても放置するなどの行動は避けましょう。意図せずともパワハラに該当する言動は厳禁です。
Q4. 管理職自身のメンタルヘルスも大切ですか?
A. はい。部下への配慮や適切な判断を行うためにも、まず管理職自身のメンタルヘルスを整えることが重要です。
<参考>
厚生労働省「令和5年 労働安全衛生調査(実態調査)」


