みなさんは職場で、「お疲れさま」、「ありがとう」、「大丈夫?」といった言葉を同僚や部下にかけていますか?
実はこうした“思いやり”や“助け合い”のやりとりが、ストレスを軽減し、心身の健康にも良い影響を与えることが、近年の研究で明らかになっています。
今回は、実際にどのような良い影響があるのかを解説し、職場環境改善のヒントを見つけていきます。
思いやりはストレス反応を和らげる
私たちはストレスを感じると、心拍数や血圧が上昇し、ストレスホルモン(コルチゾール)が分泌されます。
しかし、他者から支援を受けていると感じたり、共感を覚えたりしたとき、こうしたストレス反応が穏やかになることがわかっています。
社会的支援が心血管反応に与える影響を調べた実験1では、被験者がストレスを受けるときに、支援のある条件がない条件と比較し、血圧の上昇が小さかったという報告があります。
一方で、社会的孤立が強い人ほど、ストレスを受けた後の血圧の回復が遅いなどの傾向が見られています。
つまり、他者からの支援は、ストレスを軽減したり、和らげたりするために非常に重要な要素だということですね。
職場の思いやりは「心理的安全性」を高める!
また、みなさんは心理的安全性をご存じですか?
心理的安全性とは「チーム内で自分の考えや気持ちを安心して発言できる」と感じられる状態を指します。
Google社の研究「プロジェクト・アリストテレス」では、チームの成果を左右する最大の要因が、“心理的安全性”であると示しました。
やはり、思いやりの言葉や行動が日常的にある職場では、「助けを求めてもいい」「失敗しても支え合える」という空気が自然と生まれます。
結果として、孤立感や過度なプレッシャーが減り、ストレスも下がっていくでしょう。
なお、ドクタートラストの全国データでも、ストレスチェック項目の中で「話しやすさ・自然体」「助け合い・挑戦」「尊重・尊敬」「問題解決・挽回」といった要素のスコアが高い組織ほど、高ストレス者率が低く、“STELLA率”(いきいきと働く人の割合)が高いことがわかっています。
思いやりが職場全体に与える影響とは
さらに、思いやりは職場全体への影響もあります。
組織文化と欠勤に関する複数の研究4、5によると、組織文化は欠勤に影響を与えることが報告されています。
これは皆さんも想像がつくかと思いますが、たとえば、上司が「無理せず休んでね」と声をかける職場では、体調不良を我慢して出勤することも減り「プレゼンティーズム(病気を抱えたまま働くこと)」が減るでしょう。
一方で、「頑張るのが当たり前」、「弱音はNG」という空気が強い職場では、ストレスや疲労が蓄積し、メンタル不調につながるリスクが高まるでしょう。
このように、思いやりは、職場全体の健康への影響もあるのですね。
さらに、思いやりは“与える側”にも良い影響をもたらします。
親切・利他行為が、ポジティブな心理効果につながるという調査6もあります。
つまり、思いやりは「相手のため」であると同時に、「自分の健康を守る行為」でもあります。
小さな気づきや声かけの積み重ねが、チーム全体の健康につながっていくでしょう。
今日からできる職場での「思いやり」
では、私たちが職場で思いやりを増やすために何ができるでしょうか。
思いやりのある職場を目指すために、なにか特別なことをする必要はありません。
日々の“ちょっとした言動”を意識することから始めてみましょう。
- 朝のあいさつを必ず行う
- 感謝の言葉を口に出して伝える
- 困っていそうな同僚に「何か手伝おうか?」と声をかける
- 相手の話を遮らず、まず受け止める
- メールやチャットでも、労いやねぎらいの一言を添える
こうした積み重ねが、職場全体を「安心して働ける空気」に変えていきます。
みなさんは、日々の忙しさの中で、他人を思いやる余裕を持てているでしょうか。
思いやりは、相手のためだけでなく、自分自身、そして組織全体を健康にしていく力があります。
相手を思いやる「ひと声」から、あなたの職場の空気が少しずつ変わっていくかもしれません。
ぜひできることから、働きやすい職場づくりに取り組んでいきましょう。
よくある質問
Q1. 職場での「思いやり」は本当にストレス軽減に効果がありますか?
A. はい、効果があります。社会的支援が心血管反応に与える影響を調べた実験では、支援がある条件では血圧の上昇が小さかったという報告があります。他者からの支援や共感は、ストレス反応を和らげる重要な要素です。
Q2. 心理的安全性とは何ですか?
A. 心理的安全性とは、「チーム内で自分の考えや気持ちを安心して発言できる」と感じられる状態を指します。Google社の研究「プロジェクト・アリストテレス」では、チームの成果を左右する最大の要因が心理的安全性であると示されました。思いやりの言葉や行動が日常的にある職場では、助けを求めやすく、失敗しても支え合える空気が自然と生まれます。
Q3. 思いやりは職場の欠勤率にも影響しますか?
A. はい、影響します。組織文化と欠勤に関する研究によると、上司が「無理せず休んでね」と声をかける職場では、体調不良を我慢して出勤すること(プレゼンティーズム)が減ります。一方、「頑張るのが当たり前」という空気が強い職場では、ストレスや疲労が蓄積し、メンタル不調につながるリスクが高まります。
Q4. 今日からできる職場での「思いやり」の実践方法は?
A. 特別なことは必要ありません。朝のあいさつを必ず行う、感謝の言葉を口に出して伝える、困っていそうな同僚に「何か手伝おうか?」と声をかける、相手の話を遮らず受け止める、メールやチャットでも労いの一言を添えるなど、日々のちょっとした言動を意識することから始めましょう。
<参考>
(1)S J Lepore、K A Allen、G W Evans「Social support lowers cardiovascular reactivity to an acute stressor」(『Psychosom Med』1993年11、12月、55(6)、518~24頁)
(2)Nina Grant、Mark Hamer、Andrew Steptoe「Social isolation and stress-related cardiovascular, lipid, and cortisol responses」(『Ann Behav Med』2009年2月、37(1)、29~37頁)
(3)Natasha Tamiru「Team dynamics: Five keys to building effective teams」
(4)Kim Lardenoije「The Influence of Organizational Culture on the Prevalence and Impact of Sickness Presenteeism Among Health Care Workers: a Literature Review」
(5)Muhammad Zia-ud-Din、Arifa Arif、Muhammad Aqib Shabbi「The Impact of Workplace Incivility on Employee Absenteeism and Organization Commitment」(『IJ-ARBSS』2017年、7(5)、205~221)
(6)加藤理絵「意図的な親切行為がもたらすポジティブな心理的効果の検討」(『日本心理学会第87回大会』2023年)
(7)Molly McDonough「The Health Benefits of Kindness What do we get when we give?」


