制度

産業医のいない組織での高ストレス者面談は?従業員50人未満のストレスチェック義務化に向けて

お問合わせはこちらから

今後、ストレスチェック制度が50人未満の組織にも義務化されます。
これに伴い、高ストレス者への事後措置は重要な課題となります。
特に産業医の選任義務がない中小企業や小規模の拠点からは、「誰に高ストレス者面談(面接指導)を依頼すべきか?」という相談を多く受け付けます。
50人未満の組織には産業医を選任する義務がない反面、高ストレス者への面接指導は実施しなくてはいけません。
配置転換が難しい、職場環境改善に限界があるケースも理解できますが、従業員の心身の健康を守るためには、高ストレス者への適切な対応は必須です。
この記事では、50人未満の組織における高ストレス者への対応方法について解説します。

高ストレス者面談の依頼は?

「産業医を選任しておらず、高ストレス者から面談を申し出されたらどうすればいいか分からない」という相談をいただくことがあります。
実際に高ストレス者と判定された従業員のうち、面談を申し出るのはおよそ1割程度と言われていますが、いざという時に慌てないよう、ストレスチェック実施前に、「高ストレス者面談の申し出があった場合の対応方法」を検討しておくことが重要です。
高ストレス者から面談の申し出があった場合には、以下の3つの選択肢が考えられます。

  • 地域の産業保健総合支援センター(さんぽセンター): 各都道府県に設置されている「さんぽセンター」では、中小企業向けに産業保健に関する無料相談や情報提供を行っています。また、中小企業向けに無料で産業医の派遣を受け付けていることもあります。高ストレス者面談に関する具体的なアドバイスを受けられます。
  • 医療機関: 地域の精神科医や心療内科医は、企業向けにストレスチェック後の産業医面談を実施している場合があり、利用が可能です。
  • 産業医紹介会社やストレスチェックサービス事業者:スポット対応ができる産業医の紹介を依頼できます。また、ストレスチェックサービスを提供している事業者の中には、医師による単発の訪問面談を請け負っているところもあります。

また、小規模の拠点の場合、ほかの事業所で産業医の契約を行っているのであれば、その産業医に高ストレス者面談を依頼できる場合があります。
ただ、その場合、勤務状況や職場環境など組織の状況を把握しづらいことから、対応の可否については医師によって考え方が異なります。
受検前に契約内容を確認し、その産業医に対応がお願いできるか相談しましょう。
また、面談にかかる費用が発生した場合は企業負担となります。

高ストレス者面談の進め方と注意点

高ストレス者面談を実施する際には、企業担当者としていくつか注意点があります。
まず、面談は従業員の意思を尊重し、決して強制してはいけません。
面談の目的は、ストレスの状況や従業員のメンタルヘルスを含む健康状態を確認し、必要に応じて就業上の配慮を行うことです。
そのため、従業員に寄り添う姿勢で対応を行いましょう。

次に、面談で知り得た情報は個人情報として厳重に管理し、本人の同意なく外部に漏らさないように徹底してください。
面談を設定する担当者は守秘義務を理解し、従業員が安心して話せる環境を整える必要があります。
また、面談後、業務内容や労働時間、職場環境の見直しが必要な場合は、医師の指示だけに従うのではなく、本人と相談の上、適切な対応を検討していくことが大切です。

なお、進め方の詳しい説明については、過去の記事も参考ください。

高ストレス者が出たときの組織としての対応

前提として、「高ストレス者」とは、あくまでも「高ストレス状態な人」です。
つまり、これは「診断」ではなく、「状態」だということを理解しておきましょう。
どの職場でもストレスチェックを受検するだけではなく、結果の活用が望ましいです。
個人のストレス状態だけでなく、組織全体のストレス状況を把握し、職場環境改善につなげていきましょう。
なお、高ストレス者が出た場合、個別の面談だけでなく、組織全体としてストレスの原因を特定し、改善策を講じることが求められます。

たとえば、長時間労働の是正、ハラスメント対策の徹底、職場内でのコミュニケーションの活性化などの施策が挙げられます。
産業医がいない場合でも、衛生推進者や安全衛生推進者が中心となり、従業員の意見を聞きながら、職場環境の改善に取り組んでいくことが求められます。
ストレスチェックの結果を組織改善のチャンスと捉え、従業員が健康で働きやすい職場環境づくりを進めていきましょう。

<参考>
・厚生労働省「医学的知見に基づくストレスチェック制度の高ストレス者に対する適切な面談指導実施のためのマニュアル」

ABOUT ME
【コンサルタント】中森 チカ
【保有資格】保健師、看護師、公認心理師、第一種衛生管理者、国家資格キャリアコンサルタント、健康経営エキスパートアドバイザー 【コメント】 病棟看護師、地域包括支援センターの保健師を経て、楽しく元気に働ける人を世の中に増やしたいと思い、ドクタートラストに入社。 働くみなさまの「行動が変わる、考え方が変わるきっかけ」になるような、情報をお届けしていきます。