入社したばかりの社員(新入社員・中途採用者)にストレスチェックを実施すべきかどうか――。
これは人事・労務担当者にとって、非常に悩ましい問題ですよね。
結論からいうと「法的な義務はないが、組織のコンディション把握のために実施するのがベター」です。
なぜそう言えるのか、メリット・デメリットを整理しながら、運用のコツを解説します。
- ストレスチェックの法的なルールはどうなっている?
- ストレスチェックを入社直後の社員に実施するメリット
- ストレスチェックを入社直後に実施する注意点と運用のヒント
- さいごに
- よくある質問(Q&A)
- Q1: 入社直後の新入社員にストレスチェックを実施する義務はありますか?
- Q2: ストレスチェックの対象となる「常時使用する労働者」とは?
- Q3: 入社1カ月未満の社員にストレスチェックを実施する問題点は何ですか?
- Q4: 入社直後にストレスチェックを実施するメリットは何ですか?
- Q5: 入社直後の社員がストレスチェックで正直に答えない可能性はありますか?
- Q6: 新入社員のストレスチェック結果を集団分析に含めるべきですか?
- Q7: 入社何カ月後からストレスチェックを実施すべきですか?
- Q8: 新入社員が高ストレス判定だった場合、どう対応すべきですか?
- Q9: リアリティ・ショックとは何ですか?
- Q10: 中途採用者にもストレスチェックを実施すべきですか?
- Q11: 入社直後のストレスチェック実施の目的は何ですか?
- Q12: 新入社員へのストレスチェック実施時の配慮事項は?
ストレスチェックの法的なルールはどうなっている?
厚生労働省の「労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル」では、ストレスチェックの受検対象者は以下の両方を満たす「常時使用する労働者」とされています。
① 期間の定めのない労働契約により使用される者
② その者の1週間の労働時間数が当該事業場において同種の業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間数の4分の3以上であること
参照:厚生労働省「労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル」
しかし、新入社員については以下の解釈が一般的です。
・ 実施時期に在籍していれば対象: 実施日に在籍していれば、基本的には対象に含めて問題ありません
・ 「直近1カ月」の状態を問う矛盾: ストレスチェックは通常「過去1カ月の状況」を回答します。入社1カ月未満の場合、前職や求職期間の状態を回答することになり、自社の環境評価としては正確性を欠く可能性があります
ストレスチェックを入社直後の社員に実施するメリット
あえて「入社すぐ」にストレスチェックを受検してもらうことには、2つの意義があります。
1つ目はメンタル不調の早期発見です。 新しい環境への適応(リアリティ・ショック)による早期離職を防ぐ手立てになります。
もう1つは「会社はあなたのメンタルヘルスを大事にしています」という姿勢を示すことで、会社への信頼度やエンゲイジメントの向上の効果が期待されます。
ストレスチェックを入社直後に実施する注意点と運用のヒント
一方で、ただ「ストレスチェックを受けましょう」と言うだけでは逆効果になることもあります。
入社直後は「良い評価を得たい」という心理が働き、正直に答えられないケースがあります。
そのため、「結果が人事評価に影響しないこと」を通常以上に強調する必要があります。
また、新入社員のストレス値が高い場合、それは「職場の環境が悪い」のか「新しい環境への一時的な緊張」なのかを見極める必要があります。
集団分析の結果に混ぜてしまうと、職場の実態が歪んで見えることもあるため、「新卒・中途採用枠」として別枠で分析するのが賢明です。
これらを踏まえると、新入社員は、入社1カ月目未満の場合であれば簡単な面談やアンケートで様子見、入社3カ月以上経過した場合は通常のストレスチェックに含めるという形が妥当だと考えられます。
さいごに
入社直後のストレスチェックは、「孤立させないためのきっかけ」として捉えるのがベストです。
もし高いストレス反応が出ている新入社員がいれば、産業医面談の前段階として、人事やメンターによるカジュアルな面談をセットすることをお勧めします。
また、ストレスチェックの結果が「高ストレス」だったからといって、即座に「この人はメンタルが弱い」と決めつけるのは禁物です。
新しい環境に飛び込んだ勇気ある挑戦の結果、一時的に負荷がかかっているだけかもしれません。
まずは「お疲れさま」の声掛けから始めてみてはいかがでしょうか。
よくある質問(Q&A)
Q1: 入社直後の新入社員にストレスチェックを実施する義務はありますか?
A: 法的な義務はありません。厚生労働省の指針では、ストレスチェックの対象者は「常時使用する労働者」とされていますが、入社直後の社員への実施義務は明記されていません。ただし、組織のコンディション把握のために実施することは推奨されます。
Q2: ストレスチェックの対象となる「常時使用する労働者」とは?
A: 以下の両方を満たす労働者です。①期間の定めのない労働契約により使用される者、②その者の1週間の労働時間数が当該事業場において同種の業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間数の4分の3以上であること。
Q3: 入社1カ月未満の社員にストレスチェックを実施する問題点は何ですか?
A: ストレスチェックは通常「過去1カ月の状況」を回答する設計になっています。入社1カ月未満の場合、前職や求職期間の状態を回答することになり、自社の環境評価としては正確性を欠く可能性があります。
Q4: 入社直後にストレスチェックを実施するメリットは何ですか?
A: 2つのメリットがあります。
①メンタル不調の早期発見:新しい環境への適応(リアリティ・ショック)による早期離職を防ぐ手立てになります。②エンゲイジメント向上:「会社はあなたのメンタルヘルスを大事にしています」という姿勢を示すことで、会社への信頼度やエンゲイジメントの向上が期待されます。
Q5: 入社直後の社員がストレスチェックで正直に答えない可能性はありますか?
A: はい、可能性があります。入社直後は「良い評価を得たい」という心理が働き、正直に答えられないケースがあります。そのため、「結果が人事評価に影響しないこと」を通常以上に強調する必要があります。
Q6: 新入社員のストレスチェック結果を集団分析に含めるべきですか?
A: 別枠で分析するのが賢明です。新入社員のストレス値が高い場合、それは「職場の環境が悪い」のか「新しい環境への一時的な緊張」なのかを見極める必要があります。集団分析の結果に混ぜてしまうと、職場の実態が歪んで見えることもあるため、「新卒・中途採用枠」として別枠で分析することをおすすめします。
Q7: 入社何カ月後からストレスチェックを実施すべきですか?
A: 入社1カ月未満の場合は簡単な面談やアンケートで様子見、入社3カ月以上経過した場合は通常のストレスチェックに含めるという形が妥当だと考えられます。これにより、自社での勤務状況を正確に反映した結果が得られます。
Q8: 新入社員が高ストレス判定だった場合、どう対応すべきですか?
A: 産業医面談の前段階として、人事やメンターによるカジュアルな面談をセットすることをお勧めします。また、「高ストレス」という結果だけで「この人はメンタルが弱い」と決めつけるのは禁物です。新しい環境に飛び込んだ勇気ある挑戦の結果、一時的に負荷がかかっているだけかもしれません。
Q9: リアリティ・ショックとは何ですか?
A: 新しい環境への適応時に起こる心理的な衝撃のことです。入社前に抱いていた期待と実際の職場環境とのギャップによって生じるストレス反応を指します。この適応ストレスが原因で早期離職につながることがあります。
Q10: 中途採用者にもストレスチェックを実施すべきですか?
A: はい、新入社員と同様に実施を推奨します。中途採用者も新しい環境への適応ストレスを抱える可能性があり、早期発見・早期対応の観点から有効です。ただし、入社3カ月以上経過してから実施するのが望ましいでしょう。
Q11: 入社直後のストレスチェック実施の目的は何ですか?
A: 「孤立させないためのきっかけ」として捉えるのがベストです。ストレスチェックを通じて、会社が従業員のメンタルヘルスに関心を持っていることを示し、必要に応じてフォローアップの機会を作ることが主な目的です。
Q12: 新入社員へのストレスチェック実施時の配慮事項は?
A: 以下の配慮が重要です。
①結果が人事評価に影響しないことを明確に伝える、②集団分析では別枠で扱う、③高ストレス判定者には「お疲れさま」の声掛けから始める、④一時的な適応ストレスの可能性を考慮する、⑤入社3カ月以降の実施を検討する。


