ストレスチェックの設問には、自身のストレスについての自覚を問う設問群があり、その中でも、自身の体に感じる不調(身体愁訴)に関連する設問が11問盛り込まれています。
2023年度に株式会社ドクタートラストが実施したストレスチェックの受検者555.956名の結果を集計したところ、各設問への回答率は以下のとおりであり、働く人がどのような部分に不調を感じているかが明らかとなりました。
<身体愁訴に関連する設問への回答率>

およそ半数の人が不調を抱えている!
上図からわかるように、ネガティブな回答(ほとんどいつもある、しばしばある)が圧倒的に多かったのは、1位「目が疲れる」、2位「首筋や肩がこる」でした。
一方、「動機・息切れ」「めまい」「食欲がない」といった項目は不調を訴える人が10%未満にとどまりました。
ストレスチェックの設問は、あくまで自覚を問うものですが、日常的に体の不調を感じている人がいるという事実から目を背けることはできません。
座り仕事が多い人の腰痛や、モニターを見る機会が多い人の目の疲れ・肩こりなど、不調が出やすい勤務形態というものも当然存在します。
こうした不調がどのような経済損失を引き起こすか考えたことはあるでしょうか?
慢性的な不調がもたらす損失額は年間約3兆円
パソコンなどの画面を見つめて作業するVDT作業を長時間続けることによって心身に現れる健康障害のことをVDT症候群といいます。
VDTは、「Visual Display Terminal」の略で、VDT作業とはパソコンをはじめ、タブレット端末やスマートホンなど画面に表示される機器と、キーボードやマウス、タッチ画面などを使った作業のことを指します。
代表的なものに、眼精疲労やドライアイなど目の機能に関する症状、首や肩のこりや痛み、腰痛などの筋肉や骨格系に関する症状、疲労感やメンタル不調といった、精神・神経症状などがあります。
なお、近年の研究(※)で、肩こりや腰痛などによる「痛み」の経済的損失は非常に大きいことがわかっています。
「痛み」の症状を抱えながら仕事をした場合、1週間で4.6時間の労働時間を損失することになり、腰痛による損失額は、日本国内だけでも年間約3兆円、また、首周りの不調・肩こりによる損失も約3兆円にのぼるという試算もあります。
ただし、このような慢性的な不調の理由で、仕事を休んで治療することは現実的に難しく、多くの場合は不調を抱えたまま働くことで仕事のパフォーマンス低下を引き起こしています。
パフォーマンスを最大限引き出すための対策
目・首・肩の疲れなどは重要視されづらく、また個人に対応を任せられがちですが、前述の通り組織的に痛み対策に取り組む意義は高いでしょう。
例えば、毎日時間を決めて社内全体でビデオを見ながら簡単な体操やストレッチタイムを導入している企業もあります。
定期的に立ち上がって伸びをするよう声掛けをしたり、立ったまま作業ができるスタンディングデスクのスペースを設けるなど、従業員個人のセルフケアに頼るのではなく、組織全体の問題として取り入れやすい施策はたくさんあります。
従業員の皆さんが元気に働くことができるよう、まずはストレスチェックの結果を見直してみることから始めてみてはいかがでしょうか?
ドクタートラストでは経験豊富なコンサルタントだけでなく、保健師などによる健康指導も行っています。
自社での健康促進に、ストレスチェックからできることを探してみませんか?
<参考>
Walter F Stewart、Judith A Ricci、Elsbeth Chee、David Morganstein、Richard Lipton「Lost productive time and cost due to common pain conditions in the US workforce」(「JAMA」2003、Nov 12)
