「社員の健康が、会社の未来を創る」
最近、頻繁に耳にするようになった「健康経営」というキーワード。
「言葉は知っているけど、具体的に何をすればいいの?」
「うちのような中小企業でも実践できるものなのだろうか?」
「本当に効果があるのか、他社の成功例が知りたい」
そんな疑問や関心をお持ちの経営者や人事担当者の方も多いはずです。
今回は、今さら聞けない「健康経営」の基本から、思わず真似したくなるような具体的な企業の取り組み事例、そして自社で成功させるためのポイントまで、解説していきます。
この記事を読んで、あなたの会社が健康経営へ踏み出すための、第一歩が見つけてください。
「健康経営」とは?
健康経営とは、企業が従業員の健康管理を「コスト」ではなく「投資」として捉え、戦略的に実践することを指します。これは、経済産業省が推進している取り組みで、単に「社員が病気をしないようにする」といった守りの視点だけではありません。
社員一人ひとりが心身ともに健康で、いきいきと働くことができる環境を整えることで、以下の効果が期待できます。
- 生産性の向上
- 組織の活性化
- 優秀な人材の確保・定着
- 企業価値・ブランドイメージの向上
これらは、企業の持続的な成長、すなわち「攻め」の効果です。
少子高齢化による労働力人口の減少や、働き方の多様化が進む現代において、従業員という「人財」をいかに大切にし、そのパフォーマンスを最大限に引き出すか。
健康経営は、もはや一部の大企業だけのものではなく、すべての企業にとって重要な経営戦略の一つです。
【業種別】健康経営の取り組みの方向性
健康経営の課題やアプローチは、業種によってさまざまです。
ここでは3つの業種を例に、それぞれの特徴と取り組みの方向性を見ていきましょう。
自社の状況と照らし合わせながら、ヒントを探してみてください。
CASE1:ITサービス業(デスクワーク中心の企業)
- 主な健康課題: 長時間労働、運動不足、眼精疲労や肩こり、メンタルヘルスの不調など。
- 取り組みの方向性:
- 働き方改革との連携: 残業時間の削減や有給休暇の取得促進は、心身の健康に直結します。勤怠管理を徹底し、長時間労働を是正する文化の醸成が不可欠です。
- メンタルヘルスケアの充実:今後50名未満の事業主でも実施義務となる ストレスチェックの実施はもちろん、その結果を分析し職場環境の改善につなげることが重要です。また、カウンセラーによる相談窓口を設置し、気軽に利用できる体制を整えることも有効です。
- 運動不足解消の仕掛け: ゲーム感覚で参加できるウォーキングイベントや、オンラインでのヨガ・ストレッチ講座など、楽しみながら体を動かせる機会を提供することで、参加率を高める工夫が見られます。
CASE2:小売業(店舗勤務・シフト制中心の企業)
- 主な健康課題: 不規則な勤務体系、立ち仕事による身体的負担、顧客対応による精神的ストレス、全国の従業員へのアプローチの難しさなど。
- 取り組みの方向性:
- 全従業員への公平な情報提供: 全国の店舗で働く従業員にも情報が届くよう、専用のポータルサイトやアプリを活用する企業が増えています。健康診断の予約から結果の確認、健康情報の入手までをデジタルで完結させる仕組みが有効です。
- 柔軟なヘルスケア体制: 24時間対応の電話健康相談窓口や、オンラインカウンセリングなど、時間や場所を選ばずに利用できるサポート体制が喜ばれます。
- 事業と連動した健康意識の向上: 自社で販売する健康志向の商品を従業員に紹介したり、社割で購入できるようにしたりすることで、従業員の健康意識を高めると同時に、事業理解を深める相乗効果も期待できます。
CASE3:製造業(工場勤務中心の企業)
- 主な健康課題: 身体的な負荷、腰痛などの労働災害リスク、交代制勤務による生活リズムの乱れ、食生活の偏りなど。
- 取り組みの方向性:
- 「安全衛生」との連携: 既存の安全衛生活動と健康経営を連携させ、腰痛予防の体操や、ヒヤリハットの共有と合わせて健康課題についても話し合う場を設けるなど、一体的な推進が効果的です。
- 食生活のサポート: 社員食堂は健康づくりの絶好の機会です。管理栄養士と連携し、栄養バランスの取れたヘルシーメニューや、塩分・カロリー表示を行うことで、従業員の食への意識を変えることができます。
- 地域資源の活用: 特に地方に拠点を持つ企業の場合、地元のスポーツジムと法人契約を結んだり、地域の保健センターと連携して健康教室を開催したりと、社外の資源をうまく活用することで、コストを抑えながら効果的な施策が可能です。
明日からできる!健康経営の具体的施策リスト【レベル別】
「では、具体的に何をすればいいの?」その疑問にお答えするため、コストや手間に応じた具体的な施策をレベル別にリストアップしました。
まずはレベル1から、できそうなものを探してみましょう。
【レベル1】今すぐ始められる!低コスト施策
費用をかけずとも、意識と工夫で始められることはたくさんあります。
- 健康情報の定期的発信: 社内報や掲示板、ビジネスチャットツールで、健康に関するコラムや季節の健康注意点(熱中症、感染症など)を配信する。
- ラジオ体操・ストレッチの推奨: 始業前や昼休み後の数分間、全員で簡単な体操を行う時間を設ける。
- 「健康宣言」の実施と掲示: 経営トップが健康経営に取り組む意志を社内外に表明し、その宣言文を社内に掲示する。
- ノー残業デーの設定: 週に一度、定時退社を徹底する日を設け、メリハリのある働き方を促す。
- 階段利用の推奨: エレベーターホールに「階段を使って健康に!」「●階までなら歩こう!」といったポスターを貼る。
【レベル2】計画的に導入したい!中コスト施策
少し投資をすることで、より従業員の行動変容を促しやすくなります。
- 健康セミナー・研修の開催: 専門家(管理栄養士、睡眠コンサルタント、理学療法士など)を招き、食生活、睡眠、肩こり・腰痛予防などをテーマにしたセミナーを開催する(オンラインでも可)。
- ウォーキングイベント等の企画: 部署対抗のウォーキングラリーや、アプリを使った歩数競争など、ゲーム性を取り入れたイベントを企画・実施する。
- 健康的な飲食の提供・補助: オフィスに野菜ジュースやフルーツ、栄養補助食品などを常備し、安価または無料で提供する。
- インフルエンザ予防接種の費用補助: 接種費用の一部または全額を会社が負担し、集団での予防意識を高める。
【レベル3】本格的に取り組む!高コスト・高効果施策
戦略的な「投資」として捉え、長期的なリターンを目指す施策です。
- 専門家による相談窓口の設置: 産業医や保健師、臨床心理士などが常駐または定期的に来訪し、従業員がいつでも相談できる体制を構築する。
- 社員食堂の抜本的な改革: 管理栄養士が監修した、栄養バランスの取れた健康メニューを常時提供する。
- スポーツジムとの法人契約: 従業員が安価にフィットネスクラブを利用できるよう、法人会員契約を結ぶ。
- ウェアラブル端末の配布: 全従業員に活動量計などを配布し、アプリと連動させて健康状態の「見える化」と改善をサポートする。
- 人間ドック費用の補助・オプション拡充: 法定健診より詳細な人間ドックの費用を補助したり、女性特有のがん検診などを対象に加えたりする。
健康経営取り組みへの基本ステップ
健康経営を成功させるためには、やみくもに施策を始めるのではなく、しっかりとした手順を踏むことが重要です。ここでは、基本的な導入ステップを6段階でご紹介します。
- 【STEP1】健康宣言と理念の明確化
まずは経営トップが、健康経営に取り組むことを社内外に宣言します。なぜ取り組むのか、会社として何を目指すのか、その理念を明確にすることがすべての始まりです。 - 【STEP2】推進体制の構築
人事・総務部門が中心となり、産業医や保健師、健康保険組合などと連携した推進チームを作ります。各部署からメンバーを選出すると、全社的な協力が得やすくなります。 - 【STEP3】自社の健康課題の把握(現状分析)
ここが非常に重要です。健康診断の結果やストレスチェック、従業員アンケートなどを用いて、自社の「健康課題」を客観的に洗い出します。「残業が多い」「運動習慣がない人が多い」「メンタルの不調者が増えている」など、具体的な課題を見つけましょう。 - 【STEP4】目標設定と計画策定
洗い出した課題に基づき、具体的な目標を設定します(例:「平均残業時間を月10%削減する」「運動習慣を持つ従業員の割合を20%向上させる」など)。そして、その目標を達成するための具体的な施策とスケジュールを計画に落とし込みます。 - 【STEP5】施策の実行
いよいよ計画を実行に移します。健康セミナーの開催、運動機会の提供、食生活の改善サポートなど、計画に沿った施策を展開します。従業員への周知と参加の呼びかけを丁寧に行いましょう。 - 【STEP6】評価と改善(PDCAサイクル)
施策をやりっぱなしにせず、必ず効果を評価します。目標は達成できたか、従業員の満足度はどうだったかなどを検証し、次の計画に活かしていく。このPDCAサイクルを回し続けることが、健康経営を形骸化させないための鍵です。
成功する企業に共通する「3つのポイント」
さまざまな施策やステップを見てきましたが、健康経営を成功に導く企業には、いくつかの共通点があります。
最後に、自社で実践する上で絶対に外せない3つのポイントをお伝えします。
- トップの「本気度」が伝わっているか
最も重要なのが、経営トップの強いコミットメントです。社長や役員が自ら健康的な生活を実践し、その重要性を語る「本気度」が従業員に伝わることで、会社全体の文化として根付いていきます。 - 「やらされ感」ではなく「自分ごと」になっているか
会社から一方的に押し付けられた施策は長続きしません。イベントにゲーム性を持たせる、現場で主体的に目標を立ててもらうなど、従業員一人ひとりが「自分のための取り組みだ」と感じられる仕掛けが不可欠です。 - 自社の「課題」に合った施策か
他社の成功事例をそのまま真似るだけでは、うまくいきません。先ほどの施策リストの中から、自社の課題解決に最も貢献し、かつ従業員が受け入れやすいものは何か?という視点で、オーダーメイドの組み合わせを考えることが成功への近道です。
まとめ:未来への投資として、はじめの一歩を踏み出そう
今回は、健康経営の基本から具体的な施策、そして実践のポイントまでを詳しく解説してきました。
従業員の健康は、もはや個人の問題ではありません。
社員が心身ともに満たされ、最高のパフォーマンスを発揮できる環境を整えること。それこそが、変化の激しい時代を乗り越え、企業が持続的に成長していくための、最も確実な「未来への投資」と言えるでしょう。
「何から手をつければ良いかわからない」
「自社の課題を客観的に分析してほしい」
「計画から実行まで、専門家のサポートが欲しい」
もし、不安なら、一度専門職に相談してみるのも一つの有効な手段です。
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