ドクタートラストでは、毎年ストレスチェックの実施を受託した企業・団体における集団分析データをもとに業種別のランキングを作成しており、業種ごとの負荷がかかりやすいポイントやストレスの傾向についても分析を行っています。
このシリーズでは、ストレスチェック結果から明らかになった業種ごとのストレス傾向を解説しています。
今回は「情報通信業」です。
※本コラムの業種分類は「日本標準産業分類」に準拠しています。
全国平均を下回る高ストレス者率
高ストレス者率とは、ストレスチェックを受検した人のなかで、高ストレス者と判定された人がどのくらいいるかを示した割合です。
ドクタートラストの提供するストレスチェックサービスでは、2022年度に1,162組織約41万人に受検いただきました。
このうち情報通信業に該当する組織は206、受検者数は29,586人で、高ストレス者率は13.3%でした。

高ストレス者率の全国平均は、2020年度から3年連続増加傾向にありますが、情報通信業は同じ水準を推移しており、すべての年度において全国平均を下回る結果でした。
続いて2022年度の情報通信業の高ストレス者率を中分類で見ていきましょう。
情報通信業のなかで、最も高ストレス者率が低かったのは、通信業とインターネット不随サービス業でした。一方で最も高ストレス者率が高かったのは、情報サービス業と映像・音声・文字情報製作業でした。
ただし全国平均の15.5%を上回る業種はありませんでした。

総合健康リスクも平均より低い
総合健康リスクとは、仕事のストレス要因から起こり得る疾病休業などの健康問題が発生するリスクを表しています。厚生労働省が定める基準値を100として、数値が大きいほど健康リスクが高いことを示しています。
情報通信業の総合健康リスクは2020年95、2021年92、2022年90と改善傾向が見られます。また2020年は全国平均と同水準でしたが、2021年、2022年の全国平均は97であることから、健康リスクは低い業種といえます。

続いて2022年度の情報通信業の総合健康リスクを中分類で見ると、リスク値が最も低い業種と高い業種では15ポイントの開きがありました。
情報通信業において、最もリスク値が高かったのは映像・音声・文字情報製作業で、全国平均と比較すると1ポイント高い結果となっています。

情報通信業の特徴的な回答
それでは、情報通信業で働く人々からは、どのような回答傾向が見られたのでしょうか。
全国平均と比べて特徴的な結果が見られた設問を5つ紹介していきます。
「からだを大変よく使う仕事だ」
| ちがう・ややちがう | そうだ・まあそうだ | |
| 情報通信業 | 91.1% | 8.9% |
| 全国平均 | 62.8% | 37.2% |
「私の職場の作業環境(騒音、照明、温度、換気など)はよくない」
| ちがう・ややちがう | そうだ・まあそうだ | |
| 情報通信業 | 80.1% | 19.9% |
| 全国平均 | 68.6% | 31.4% |
「一人ひとりの価値観を大事にしてくれる職場だ」
| そうだ・まあそうだ | ちがう・ややちがう | |
| 情報通信業 | 61.3% | 38.7% |
| 全国平均 | 50.6% | 49.4% |
「自分のペースで仕事ができる」
| そうだ・まあそうだ | ちがう・ややちがう | |
| 情報通信業 | 63.5% | 36.5% |
| 全国平均 | 53.0% | 47.0% |
「目が疲れる」
| ほとんどなかった・ときどきあった | ほとんどいつもあった・しばしばあった | |
| 情報通信業 | 43.6% | 56.4% |
| 全国平均 | 53.1% | 46.9% |
情報通信業を中分類で見ると、ソフトウェアの開発などを行う情報サービス業に分類される企業の割合が多いことから、「からだを大変よく使う仕事だ」「私の職場の作業環境(騒音、照明、温度、換気など)はよくない」という設問に「ちがう・ややちがう」と回答している割合、「目が疲れる」に「ほとんどいつもあった・しばしばあった」と回答している割合が全国平均と比べて高くなっているなど、パソコン作業を主とする働き方による回答傾向が特徴としてみられました。
IT企業・情報通信業に求められるメンタルヘルス対策
今回のストレスチェック結果から、情報通信業には以下のような特徴が見られました。これらを踏まえた具体的なメンタルヘルス対策を紹介します。
眼精疲労・VDT症候群への対応
情報通信業では「目が疲れる」と回答した割合が56.4%と全国平均を9.5ポイント上回っており、パソコン作業による身体的な負担が大きいことがわかります。長時間のVDT(ディスプレイ)作業は、眼精疲労だけでなく、肩こり・頭痛・睡眠の質の低下にもつながります。
対策としては以下が有効です。
- 1時間に1回程度、画面から目を離して遠くを見る休憩を取る
- モニターの明るさ・高さ・距離を適切に調整する
- 定期的な健康診断やストレスチェックで身体的な負担を継続的に把握する
テレワーク・孤立リスクへの対応
情報通信業は「自分のペースで仕事ができる」と回答した割合が63.5%と高く、裁量のある働き方が浸透していることがわかります。一方で、テレワークや個人作業が中心になりやすい環境では、孤立感やコミュニケーション不足が生じるリスクもあります。
特に、ストレスを抱えていても周囲に気づかれにくい状況になりやすいため、以下のような取り組みが重要です。
- 1on1ミーティングや定期的なチェックインの仕組みを整える
- チャットツールだけでなく、定期的な対面・オンライン会議の機会を確保する
- 相談しやすい環境づくりとして、外部相談窓口の設置を検討する
「結果が良い」からこそ継続的な把握を
情報通信業は高ストレス者率・総合健康リスクともに全国平均を下回る結果でしたが、それは「問題がない」ことを意味するわけではありません。良い結果を支えている要因を把握し、維持・強化していくことが重要です。
また、業種全体の結果が良くても、部署や個人によって状況は異なります。集団分析を活用して職場ごとのストレス傾向を把握し、課題が顕在化する前に手を打つことが、メンタルヘルス対策の鍵となります。
ドクタートラストでは、ストレスチェックの実施から集団分析・職場環境改善まで一貫してサポートしています。
IT企業・情報通信業の特性を踏まえた支援をご希望の方は、お気軽にご相談ください。
よくある質問(Q&A)
Q1. 情報通信業の高ストレス者率は全国平均と比べてどうですか?
ドクタートラストの2022年度データによると、情報通信業の高ストレス者率は13.3%で、全国平均(15.5%)を下回っています。2020年度から3年連続で全国平均を下回る結果が続いています。
Q2. 情報通信業の総合健康リスクはどのくらいですか?
情報通信業の総合健康リスクは2020年95、2021年92、2022年90と改善傾向にあります。2021年・2022年の全国平均は97であり、情報通信業は健康リスクが低い業種といえます
Q3. 情報通信業のストレスチェック結果にはどのような特徴がありますか?
全国平均と比べて「からだを大変よく使う仕事だ」「作業環境がよくない」という回答が少ない一方、「目が疲れる」と回答した割合が56.4%と全国平均(46.9%)を上回っています。また「自分のペースで仕事ができる」「一人ひとりの価値観を大事にしてくれる」という回答も全国平均より高く、働きやすい環境が整っている傾向があります。
Q4. 情報通信業で「目が疲れる」と回答した人が多いのはなぜですか?
情報通信業はソフトウェア開発などパソコン作業を主とする働き方が中心のため、長時間のVDT作業による眼精疲労が生じやすいと考えられます。
Q5. ストレスチェック結果が良かった場合も対策は必要ですか?
はい、必要です。業種全体の結果が良くても、部署や個人によって状況は異なります。良い結果を支えている要因を把握・維持しながら、集団分析を活用して職場ごとのストレス傾向を継続的に把握することが重要です。
Q6. IT企業・情報通信業ではどのようなメンタルヘルス対策が有効ですか?
ストレスチェック結果の特徴を踏まえると、眼精疲労・VDT症候群への対応、テレワークや個人作業による孤立リスクへの対応が特に重要です。1on1ミーティングの実施や外部相談窓口の設置、集団分析を活用した職場環境改善などが有効な対策として挙げられます。







