研究レポート

円滑なコミュニケーションのために活用したい「アサーション」

お問合わせはこちらから

皆さんは職場でコミュニケーションを取るなかで、「そんなつもりで言ったわけではなかったのに……」「きちんと意図が伝えられず、相手を傷つけてしまったかもしれない……」「ちょっときつく言いすぎてしまったかもしれない……」などと感じた経験がありませんか?
そのあとにきちんとフォローができていればまだよいのですが、こうしたコミュニケーションが続いてしまうと、お互いの関係性に悪影響を及ぼしかねません。
そこで本記事では、きちんと自分の考えを伝えながら、相手の考えも同じように尊重する「アサーション」についてご紹介いたします。

アサーションとは?

アサーションとはコミュニケーションスキルのひとつで、「自分も相手も同じくらい尊重する適切な自己表現」のことです。
このアサーションが職場で欠けてしまうと、どちらか一方が不利な状態になったり、お互いへのリスペクトがなくなったりしてしまいます。
こうした状態が続けば、そもそものコミュニケーションをお互いに取らなくなっていき、対人関係のストレスが溜まったり、連携不足からミスの増加や生産性の低下につながったりする原因になります。

しかし、アサーションを上手く取り入れ、お互いに納得できる着地点を見つけられるような伝えかたができるようになれば、信頼感が高まり、密なコミュニケーションによる連携の強化が期待できるでしょう。
重要なのは、自分の意見や要望だけを伝えるのではなく、同時に相手への提案を行い、どうしていくか選択の機会を設けることです。

3つの自己表現タイプについて

アサーションでは、コミュニケーションにおける自己表現タイプを3つに分類しています。
皆さんはどの自己表現タイプに当てはまりそうでしょうか?

ノンアサーティブタイプ(非主張型)の特徴

ノンアサーティブタイプ(非主張型)

・引っ込み思案なところがある
・自分に自信がない
・相手の意見に合わせて行動したり相手任せにしたりすることが多い
・相手に認められたい
・相手に反論されると言い返せなくなる
・何も言い返せないが心の中に不満やモヤモヤを持ち続けることがある
・不満や不快を覚えたとき、言葉でなく咳払いなど態度で示すことがある
・部下に面と向かって仕事の催促をしたり注意をしたりするのは苦手だ

上記のように、どちらかというと自分より相手の考えを優先しがちな傾向があるのが、ノンアサーティブタイプの特徴です。

アグレッシブタイプ(攻撃型)の特徴

アグレッシブタイプ(攻撃型)

・人前で弱さをさらけ出すのが苦手だ
・他人の悪いところが目につきやすい
・他人に何かを指摘することがよくある
・他人のミスについ厳しくなってしまう
・自分の思い通りにならないとイライラしてしまう
・他人の話をさえぎって自分の話をすることがある
・部下の話を聞かずに一方的に叱ることが多い
・部下が自分の命令通りに動いてくれれば職場の生産性が上がると思う

上記のように、どちらかというと相手より自分の考えを優先しがちな傾向があるのが、アグレッシブタイプの特徴です。

アサーティブタイプ

アサーティブタイプ

・他人に正直な気持ちを打ち明けられる
・自分の意思で積極的に行動できる
・人が多い場でも自己主張ができる
・苦手な人との会話も柔軟にこなせる
・部下を叱るとき、部下の事情や気持ちも必ず聞く
・相手に非難されても自分を卑下せずにきちんと自己主張ができる
・相手の主張が自分と違っていても否定せずに尊重できる
・自分も相手も納得できる着地点を探そうとする

上記のように、自分の考えを大切にしつつ、相手の考えにも配慮する傾向があるのが、アサーティブタイプの特徴です。

3つの自己表現タイプの言動の違い

ここで、3つの自己表現タイプにはどのような言動の違いがあるのか、職場で起こりそうなシチュエーションを設定して見てみましょう。

【現在の状況】

Aさんは、後輩社員のBさんとセミナーの資料を作成しています。
ところが、実施前日の打ち合わせの際、Bさんは途中までしか資料を作ってきませんでした。

ノンアサーティブタイプ(非主張型)の場合

ノンアサーティブタイプ(非主張型)のAさんは、黙ってBさんの作りかけの資料を受け取りました。
Aさんは後味の悪い思いをしただけでなく、徹夜をして1人で資料をまとめることになってしまいました。

アグレッシブタイプ(攻撃型)の場合

アグレッシブタイプ(攻撃型)のAさんは、「こんな状態で明日のセミナーどうするんだ!」とBさんに大声で怒鳴りました。
Bさんはうつむいたまま黙って何も言わず、お互いに険悪な雰囲気のまま打ち合わせが終わりました。

アサーティブタイプの場合

アサーティブタイプのAさんは、まずBさんに資料が仕上がっていない理由を聞いたうえで、不明点を一緒に考え、Bさんが最後まで仕上げられるところまで指導を行いました。
2人とも多少残業となりましたが、清々しい気持ちでセミナーにのぞむことができました。

それぞれの自己表現タイプによる言動の違いをご覧になって、皆さんはどのように感じたでしょうか?
正直、セミナー前日になっても資料を持ってこないBさんにも問題がありますが、そこでアグレッシブタイプのようにカッとなってしまっては、すべてが水の泡です。
イライラしてしまう気持ちを一旦落ち着けて、アサーティブタイプのような対応ができると、Bさんのスキルもあがり、2人にとっても会社にとってもプラスになるでしょう。

なお、ノンアサーティブタイプもメンタルヘルスを考えると、よいとは言い切れません。
自分の意思に反する仕事を我慢して遂行しなければならない状況は、とてもストレスが溜まります。
つまり、なにごともバランスが大事であるということです。
いま現在の自分がどんな自己表現タイプなのかを知って、日頃のコミュニケーションを振り返ってみるのもいいかもしれませんね。

まとめ

令和元年上半期の雇用動向調査によると、男女ともに転職理由の上位に「職場の人間関係」が入っており、職場の人間関係が悪いと退職リスクも高まることが示されています。
加えて、ドクタートラスト2022年度ストレスチェック全国データによると、下記4設問に対して最も不良な回答をした人のうち、半数以上が高ストレス者となっていたというデータも出ています。

・私の職場の雰囲気は友好的である(職場の対人関係)
・上司は誠実な態度で対応してくれる(上司の公正な態度)
・私たちの職場ではお互いに理解し認め合っている(職場の一体感)
・職場の同僚とどのくらい気軽に話が出来るか(同僚のサポート)

これらのことから、職場の人間関係を良好に保てるかどうかが、ストレスに大きく関わっていることがわかります。
ぜひ今回の記事を参考に、日頃のコミュニケーションのなかにアサーションを取り入れて、良好な人間関係の構築に取り組んでみてはいかがでしょうか。
DL


<参考>
厚生労働省「令和元年雇用動向調査」

ABOUT ME
【シニアコンサルタント】倉科 彩香
【保有資格】健康経営エキスパートアドバイザー 【コメント】前職ではやりがいはあったものの、長時間労働が当たり前の環境で働く中で、ワークライフバランスについて考えるようになりました。今では健康経営エキスパートアドバイザーとして、ストレスチェック結果を活用した職場環境改善に取り組む企業のコンサルティングや、各種セミナー等を行っております。これまでの学びをもとに「健康でいきいきと働く人」を世の中に増やすために役立つ情報をお伝えします。