受検&結果の活用

ストレスチェックの結果を経営層に伝える方法|職場環境改善を実現する4つの戦略

お問合わせはこちらから

ストレスチェック制度が義務化されて以降、多くの企業で実施が定着してきました。
しかし、「実施して終わり」では本来の効果を発揮できません。集団分析結果を活用し、職場環境を改善してこそ意味があります。

一方で、「改善につなげたいが経営層が動いてくれない」「予算や人員が確保できず施策が進まない」といった声も多く聞かれます。
本コラムでは、ストレスチェックを起点に多くの企業で課題となる「経営層の理解とコミットメントをどう獲得するか」について解説します。

ストレスチェック後の職場環境改善に経営層の関与が必要な理由

ストレスチェック結果により部署ごとの課題が明確になっても、改善を実行するには「権限」「予算」「社内周知」が不可欠です。

経営層がコミットすることで、以下が可能になります。

  • 必要なリソースの確保
  • 部門横断での全社的な取り組み
  • 改善スピードの向上

反対に、経営層が関与しない場合は改善が現場任せになり、結果が活用されないまま翌年同じ課題を繰り返す可能性があります。

経営層が職場環境改善に消極的になりやすい理由

経営層が慎重になる背景には、次のような傾向があります。

  1. 短期的な成果を求めがち:効果が数値に現れるまで時間がかかり、優先度が低く見られやすい
  2. コストへの懸念:研修・面談・コンサルティングなど、投資対効果が見えにくい
  3. 現場の問題と捉えてしまう:経営課題ではなく部署の問題とされやすい
  4. 変化を避けたい心理:組織文化の改善には負荷がかかりやすく、後回しにされる

こうした背景を理解し、戦略的にアプローチすることが重要です。

経営層の賛同を得るための4つの戦略

ストレスチェックの集団分析結果は、経営層に「改善の必要性」を客観的に伝えるための強力な材料となります。

① データで語る

ストレスチェックの結果を活かし、以下を示すことで、経営指標に与える影響を明確にできます。

  • 高ストレス者割合
  • 職場環境の状態
  • 過年度や他社との比較
  • 離職率・休職状況との関連

さらに、改善しなかった場合のリスク(離職増、採用難、法的リスク)や成功企業の事例を示すと、説得力が高まります。

② 長期的視点を提示する

ストレス改善施策は短期間では成果が見えにくいものの、長期的には組織の成長に直結します。
人材定着、組織風土改善、生産性向上など、中長期で評価すべき成果であることを共有します。

③ 共通の目標を設定する

ストレスチェックの活用を労務施策ではなく経営戦略と位置づけ、たとえば以下と結びつけると、経営層にとって“自分ごと化”しやすくなります。

  • 中期経営計画
  • 離職率削減
  • 人材開発計画
  • 生産性向上プロジェクト
例)
「高ストレス者の割合を●%削減する」
「管理職研修を年●回実施し、健康リスク指標を前年比●pt改善」

④ 共感を得る

経営者の意思決定は数字だけでなく「心に響く情報」に左右されます。
従業員コメント、現場の声、管理職の負担感、他社の成功ストーリーなど、定性データを交えて説明することで、より腹落ちしやすくなります。

効果的に伝えるためのコミュニケーション戦略

経営層に働きかける際は、伝え方も非常に重要です。

  • 分析レポートをわかりやすく整理した資料を用意
  • 経営会議や役員会で報告
  • 社内報やイントラで情報共有
  • 外部専門家のコメントを添付して信頼性を強化

外部コンサルタントの意見を加えると、第三者の視点が入り説得力が高まります。

まとめ ― ストレスチェックを「経営の武器」にする

ストレスチェックは単なる義務ではなく、職場環境改善を推進する経営ツールです。
その効果を最大限に発揮するには、経営層の理解とコミットメントが欠かせません。

データ、長期視点、共通目標、そして共感。

これらを組み合わせることで、経営層を動かし、組織全体を巻き込んだ改善が実現します。
ストレスチェックの結果をしっかり活用し、組織の未来をより良いものにしていきましょう。

よくある質問(Q&A)

Q1. ストレスチェックの結果を経営層にどう伝えればいいですか?

A. データで語ることが重要です。高ストレス者割合、職場環境の状態、過年度や他社との比較、離職率・休職状況との関連を示し、経営指標に与える影響を明確にしましょう。さらに、改善しなかった場合のリスク(離職増、採用難、法的リスク)も提示すると効果的です。

Q2. 経営層が職場環境改善に消極的な理由は何ですか?

A. 主に4つの理由があります。

(1)短期的な成果を求めるため優先度が低く見られやすい
(2)コストへの懸念から投資対効果が見えにくい
(3)現場の問題と捉え経営課題として認識されにくい
(4)組織文化の改善には負荷がかかるため後回しにされる

Q3. ストレスチェックの結果を経営戦略と結びつける方法は?

A. ストレスチェックの活用を労務施策ではなく経営戦略と位置づけることが重要です。中期経営計画、離職率削減、人材開発計画、生産性向上プロジェクトなどと結びつけ、「高ストレス者の割合を●%削減する」といった共通の目標を設定すると、経営層にとって”自分ごと化”しやすくなります。

Q4. 経営層に効果的に伝えるためのポイントは?

A. 分析レポートをわかりやすく整理した資料を用意し、経営会議や役員会で報告することが効果的です。また、従業員コメントや現場の声といった定性データを交えることで共感を得やすくなります。外部専門家のコメントを添付すると、第三者の視点が入り説得力が高まります。

ABOUT ME
馬場 智
【職位】ストレスチェック市場開発部 参事 【保有資格】第二種衛生管理者、健康経営アドバイザー 【コメント】働く方々が安心して活躍できる職場づくりに貢献するため、ストレスチェックをきっかけとした職場環境改善の支援を行っています。制度を正しく実施するだけでなく、結果を活かした具体的なアクションにつなげていくことを大切にしています。企業さまの課題や状況に寄り添いながら、実務に役立つ情報をわかりやすくお届けできるよう努めてまいります。