職場環境最優良法人2024

【回答者数501人以上1,000人以下部門】
南部化成株式会社さま

ドクタートラストのストレスチェックサービスでは、集団分析結果をもとに、職場の雰囲気を数値化した独自指標「TRUSTY SCORE」(職場環境指数)を算出、上位法人を職場環境優良法人として表彰しています。
今回は、2024年度のストレスチェックで、職場環境優良法人(回答者数501人以上1,000人以下部門)2位を受賞した南部化成株式会社の片川裕文さま(管理本部 総務人事部 部長代理)、藪田智志さま(管理本部 総務人事部 総務課 課長代理)、望月靖彦さま(管理本部 総務人事部 人事労務課 課長代理)、浅沼加奈子さま(管理本部 総務人事部 人事労務課)にメンタルヘルス対策やコミュニケーションの活性化に向けた具体的なお取り組み内容を伺いました。

聞き手:根本裕美子(ストレスチェック研究所 保健師)

南部化成株式会社さまに記念の盾を贈呈!

70年の歴史を持つ総合メーカーとしての企業風土

今日はありがとうございます。はじめに南部化成さまの概要を教えてください

片川さま:

南部化成は1981年設立の合成樹脂関連の総合メーカーです。
前身に南部工業、さらにその前に南部商会という流れがあり、南部商会の時代から含めるとおよそ70年の歴史を持ちます。
長い経験で培った”技術力”、それに企画や設計開発はもちろん、金型も自前で作り、最終的には皆さんに使っていただけるようパッキングしてお届けする”一貫生産”を強みとして、医療や自動車、住宅、最近ですとインフラといった分野でさまざまな製品を提供しています。
また、日清紡グループの一員として、共通の企業理念「挑戦と変革。地球と人びとの未来を創る。」を価値観とし、その実現を目指しています。

南部化成さまは静岡に拠点を置く会社さんです。何か地域的な特徴などはありますか

片川さま:

南部化成単体ですと600名強の従業員が在籍し、県内では、この本社(吉田町)と近くの大井川事業所、大井川の東岸に位置する藤枝事業所、東部の裾野事業所の4拠点に分かれて働いています。
1拠点あたり100名から200名のほどよい規模感ですので、職場の風通しのよさが特徴だと思います。
加えて静岡出身の社員が多く、その県民性から面倒見がよく、困っている人がいれば周りがサポートし解決につなげる風土が特徴です。
「風通しのよさ」は社長のポリシーでもありますので、打ち合わせがあるときなどを除いて、社長室の扉はいつも開放されています。
また、日清紡グループ共通の行動指針の一つ「多様性を尊重し、一人ひとりの持つ個性と能力を活かして成果につなげます。」に基づき、多様な属性の従業員が活躍できる職場環境の実現を目指しています。
特に障害者の方が戦力として活躍できる働きやすい職場作りについては、2024年度の静岡県障害者雇用促進大会で「静岡県知事褒賞」を受賞しました。

片川裕文さま(管理本部 総務人事部 部長代理)

管理職を中心としたメンタルヘルス対策の充実

今回は南部化成さまに「メンタルヘルス対策」「社員間のコミュニケーション」施策へのお取り組みを伺っていきます。まずは一つ目の「メンタルヘルス対策」について教えてください

薮田さま:

南部化成では管理職が部下全員に対して行う「メンタルヘルス対応個人面談」を年に1回実施しています。
勤務状況や業務内容・負荷、今後やりたいことといった仕事面以外にも、睡眠などの体調面、言える範囲でのプライベート面についてヒアリングし、もし気になる方がいたら産業医面談につなげたり、場合によっては配属の検討などを行ったりしています。

打ち合わせなどで上司の方とお話しする機会は日常的にあるものと思います。「メンタルヘルス対応個人面談」と銘打つことで、普段は出てこないような相談もあるのでしょうか?

薮田さま:

そうですね。特に製造現場ですと仕事への思いや大変さについては、普段あまり話をしませんので、こうした機会は上司が部下の状況を理解できるいい場だと思っています。

藪田智志さま(管理本部 総務人事部 総務課 課長代理)

片川さま:

当社ではこれまでストレスチェックを6月に実施し、7月に面談を実施してきました。
今年は新たな試みとして、ストレスチェック後、管理者層に向けて集団分析結果説明会を実施、さらに9月に管理職層を対象にした勉強会、研修会(ラインケアなど)を開催したうえで10月に面談を行う、つまりストレスチェックから一連の流れでの取り組みを考えています。

お話を伺っていますと、研修や面談など、管理職層の方々を対象とした施策も充実している印象を受けます

望月さま:

メンタルヘルス不調の理由はさまざまですが、そのなかで「上司の理解が重要」という意見があったものですから、これらの取り組みを始めるに至りました。
また、社員がメンタルヘルス不調でお休みするのは、会社にとっても本人にとってもプラスのことは一つもありません。何かあった場合は、早く復帰できるようサポートすべく各施策を進めています。

メンタルヘルス面では相談窓口も運用されているそうですね

望月さま:

本人がメンタルヘルス不調になってしまうまでに悩みを抱え、溜め込んでしまう。そしてそれを相談できる相手がおらず、さらに悩む……という悪循環が見られました。
相談窓口自体はもともと設置しており、悩んでいる社員からの人事労務課に対する相談はこれまでにもありましたが、見直しのうえあらためて社内で周知を行ったものです。

窓口の運用状況はいかがでしょうか

望月さま:

悩みを言うことで「気持ちが落ち着いた」という社員もいますし、退職まで思い詰めていた方については関係部署にヒアリング、対応方法のアドバイスなどをしました。結果的に「私は辞めなくていいんだ」と安心して、現在も働いています。
「本人の話を聞く」が一番大切なのかなと思いながら実施しているところです。

望月靖彦さま(管理本部 総務人事部 人事労務課 課長代理)

こうしたメンタルヘルスのお取り組みで総務課さんと人事労務課さんはどのように役割を分担されているのですか

片川さま:

メンタルヘルス対策は、健康管理や安全衛生を担当している総務課からの切り口がもともと多かったのですが、労務面からの施策も増えてきました。いまは総務課、人事労務課の両輪で進んでいる状態です。

労務面からいいますと新たに「勤怠状況」をもとにした施策も始めたそうですね

浅沼さま:

今までのメンタルヘルス対策は、周りから情報を得て初めて動き出すことが多かったのですが、人事労務課では勤怠管理も行っていますので、まとまった休みを取っている社員を対象に理由等をヒアリングし、メンタルヘルス不調の早期発見につなげようと取り組んでいます。

浅沼加奈子さま(管理本部 総務人事部 人事労務課)

望月さま:

こちらとしては社員が「突然長期休業した」と思っていても、改めて調べてみると実は長期休業に入る前に欠勤や遅刻、早退が増えていたというケースがあることがわかりました。
そこで3~5日お休みされたり、遅刻早退が目立ったりする社員は、メンタルヘルス不調で休む前兆ではないかと一つひとつ見ていくようになりました。

片川さま:

まだ始めたばかりですので、今後、実際にメンタルヘルス不調の予兆管理につなげられるか検証を進めていきます。

望月さま:

このほかには「メンタルヘルスガイドライン」を会社として制定し、メンタルヘルス不調により休業する社員に対する対応を標準化するなどしています。

若手社員に向けたきめ細かなコミュニケーション支援

続いて「社員間のコミュニケーション」施策について教えてください

望月さま:

取り組みの一つに、数年前に導入した「メンター制度」があります。
新入社員は新しい環境で慣れないことばかりですので、悩んだときに相談できる体制として、別の職場の年齢が近い社員にメンターとしてついてもらっています。
相談を受けたメンター社員には面談レポートを提出してもらい、人事労務課員がコメントを書いてフィードバックする流れになっています。
また、会社のなかで面談するだけではなく、社外で食事でもしながらお話しできるよう、面談時の食事代を補助しています。

昼食補助のイメージでしょうか?

望月さま:

ランチに限らず食事全般に補助を出しています。なかには「○○さんに焼肉に連れていってもらいました」なども聞きました。
これら取り組みは会社に早く慣れてもらい、定着化を図りながら、最終的に戦力として活躍していただく目的で行っています。
学生時代は上下3~4歳程度の人間関係ですが、会社に入ると、それこそ自分の祖父母の世代の方とも関わります。そうした戸惑いを先輩が聞いてあげるとともに、メンター社員である先輩側に、入社したての頃を思い出してもらう機会にもつながっています。
思いやりの心を持って、南部化成全員が一丸となって気持ちよく働ければ、結果としていい仕事ができる、ひいては業績向上につながると思っています。

個人と会社がWin-Winの関係ですね!

望月さま:

社員同士がお互いに緊張せず、フラットな関係性を築く意図での取り組みとしては、「さん付け運動」も挙げられます。
社内メールであっても役職を間違えないよう注意を払い、「○○課長殿」と書くような時代もあったのですが、「同じ南部化成の社員、仲間なんだから『さん』付け呼びでいいんだよ」と推進しています。

これは社長など経営層も含めてですか?

望月さま:

もちろんです。
実は私はまだ……社長に「さん付け」でお声がけするのは、ちょっと抵抗があるのですが(笑)。

「さん付け運動」によって変わったなと感じることはありますか?

望月さま:

社員同士の距離感が縮まった感覚は非常に大きいです。

「声をかけやすい」というメリットも「さん付け」にはありそうです。
また、先ほど紹介くださったメンター制度とは別に「若手社員面談」も行っているのですね

望月さま:

メンター制度は入社1年目を対象としているものです。
入社から数年たつことで心境の変化や悩みなどが生じるものですから、人事労務課の社員が各事業所に赴き、入社1年後、4年後、および採用時25歳以下の中途入社社員と面談をしています。
仕事内容のミスマッチや悩み、希望などを早期に把握することにもつながる、さらによい施策にしていければと考えています。

メンタルヘルス対策の一環として実施されている「メンタルヘルス対応面談」も含めて、話をする機会が折々に用意されている印象です

片川さま:

今年からは新入社員についても入社2カ月半程度たったころに、この面談を実施しています。

若手社員面談では、キャリアに関するお取り組みともいえると思います。同様の方向からの施策はほかにもありますか

望月さま:

はい。自分自身の得意なことや、これから取り組んでいきたいことを「キャリアシート」に書いてもらい、自分の業務の棚卸しをしてもらったうえで、上司と面談する「キャリア申告制度・面談」があります。
本人の思いの中で「本当はやりたいこと」があったとしても、なかなか言い出すきっかけがありません。
それを制度として「このシートに書いてください・上司はこれに基づいて面談をしてください」と定めたのです。
異動希望の社員については、異動や評価などを決める会議体「人事委員会」での検討対象とし、なるべく本人の希望が叶うようにしています。
もちろん希望通りの部署に移っても、何か障壁にぶつかるかもしれません。
ですが、人から指示されたことではなく「自分がやりたい」と思ったことは乗り越えていけると思っています。
ただ、この制度はあくまできっかけですので、キャリアを形成するのは自分自身です。
もし何か別の業務がやりたいのであれば技術や技能、関連知識が必要になります。
面談ではそうしたアドバイスも行いますし、コミュニケーションのツール、場としても活かされています。

会社側や上司からアドバイスをもらえるのはありがたいですね!

望月さま:

会社が「彼を営業畑で育てたい」と意図していても、本人が技術畑志向であった場合はミスマッチにつながり、「なんで会社は自分の思いを理解してくれない……」という気持ちが募り、結果的にストレスをため込んでしまいます。
こうしたことができるだけ起こらないようにしていきたいのです。
そもそも入社時に配属された職種が必ずしも定年まで同じという人は、私はほぼいないと思います。
変化があるから面白いと思っていますので、「この会社で何がやりたいかを自分自身でも考えてください」という思いで、会社として社員が自身のキャリアを考える機会を提供しています。

根本裕美子(ストレスチェック研究所 保健師)

事業所を越えた組織風土改善とコミュニケーション活性化

次に組織的な施策についても教えてください。ストレスチェックとは別に「従業員サーベイ」もされているそうですね

薮田さま:

従業員サーベイは日清紡グループの取り組みではあるのですが、南部化成ではサーベイの実施後に、全社活動と並行で事業所単位の「組織風土改善アクションチーム」を編成し、サーベイ結果の分析をもとに各種の組織風土改善活動を行っています。
チームは役員をトップとし、管理職、一般職混合で組織され、サーベイの結果を踏まえて、自分たちの事業所には何が不足しているのかをみんなで考えていこう、行動をしていこうと進めています。
小さな取り組みでは「挨拶運動」が、大きな活動では「ボランティア」が挙げられます。

挨拶運動やボランティアはどういった目的で行うことになったのでしょうか

藪田さま:

挨拶運動については、挨拶の声が小さいとか、こちらから挨拶をしても返してもらえないなどがありましたので、まずは挨拶から盛り上げようと始めました。
ボランティアについては、仕事ですとチームでの活動が主になっていますので、事業所全体で何かをやろうとしてスタートしました。
大井川沿いで開催されるマラソン大会「しまだ大井川マラソンinリバティ」にボランティア参加するなど、組織風土改善の枠のなかでコミュニケーション施策の一つとして取り組んでいます。

コミュニケーションの施策としては「部活動」もあるそうですね

藪田さま:

現時点で活動しているのはゴルフやフットサルなど5つのクラブで、会社から活動費を補助しています。
6名以上集まれば活動ができるので、たとえば「編み物部をやりたい」、「水泳部をやりたい」なども従業員の意思で始められるのが特徴です。

ありがとうございます。事業所を越えた取り組み、それこそ全社的な大きな取り組みはありますか?

藪田さま:

先ほども少し出てきた社内報が挙げられます。最初にご紹介したとおり南部化成には本社、大井川、藤枝、裾野があるのですが、実は事業所ごとに自動車、医療など担当分野が異なります。
そのため、ほかの事業所でどういうものを作っているのか、どういう活動をしているのかを知らない社員もいますので、「この事業所ではこんなことをやっていますよ、こういう方がいらっしゃいますよ」と広くみんなに知らせる目的も持っています。

片川さま:

少し補足をしますと、社内報は、従業員サーベイからのつながりで今年から始めたものです。
もともと当社は、環境マネジメントシステムに関する国際規格「ISO14001」を取得するなど、環境に配慮した取り組みなどをしてきました。このことを社員にわかりやすく伝えるべく作成するようになりました。

事業所の垣根を越えた施策はほかにもありますか

片川さま:

毎年1月に行う「経営方針発表会」があります。全体の社員が集まり、社長、および各部門の方針発表、各種表彰などを行っています。発表会のあとには懇親会も開催し、別々の拠点で働く社員間の交流の場となっています。

ストレスチェック集団分析の活用と今後の展望

ここで話題を「ストレスチェック」に移らせてください。ドクタートラストのストレスチェックサービスへのご感想を伺えますか

薮田さま:

当社には、外国籍の従業員も多く在籍しているため、ベトナム語など母国語でストレスチェックを対応していただけているのは非常に助かります。
また集団分析結果では、拠点ごとの分析はもちろん、属性別に全国平均などの客観的なデータと比較しているので、南部化成の強み、弱みがよくわかり、対策すべき項目の絞り込みが行いやすいと感じています。

従業員サーベイは事業所単位でチームを作り、施策を打っているとのことでしたが、ストレスチェックの集団分析結果は、どう使っていらっしゃいますか

薮田さま:

昨年までは、管理職向けに説明会を行い、職場の風土や業務分担などの改善の指標として活用してきました。
今年からは、先ほど申し上げたように集団分析結果説明会ののちに、管理職層を対象にした研修会を開催したうえで10月に「メンタルヘルス対応個人面談」を行うという、説明会から一連の流れで進めていく予定です。

最後に今後の展望をお聞かせください!

片川さま:

実は当初インタビューを受け入れさせていただくにあたり、「そんなに答えることがあるかな? 困ったな……」と思いました。けれども取り組みを書き出してみると、さまざまやってきていることが自分たちでもわかり、振り返りの機会として本当にありがたかったです。
振り返ってみますと「職場におけるコミュニケーションとはそもそも何なのか?」「そこに必要なもの、ことは?」という本質的な部分は、まだ各々の感覚任せになっているかもしれません。
コミュニケーションについて、普遍的なものはあるでしょうが、一方で昭和生まれから平成10年代後半生まれまで幅広い世代が一緒に働いていることから、感覚や考え方が大きく違っていても当然です。
まだまだ漠然とした考えですが、コミュニケーションを向上させることで、従業員のパフォーマンスを上げ、組織の力を最大化するという成果に会社としてつなげるべきだと考えています。
そのためにも「コミュニケーション」を、たとえば技術・技能的な側面や、取るべき行動として具体的に落とし込むといった共通言語で共有化し、南部化成という組織に合った形で全体としてレベルを上げていけるようなアプローチを考え、実行することに取り組んでいきたいです。

南部化成株式会社さま、ありがとうございました!

南部化成株式会社

車載や医療業界、住宅設備向けにプラスチック成形品を企画から加飾組立までカバーする静岡県のグローバルメーカー。日清紡ホールディングスのグループ会社であり、企業理念は「挑戦と変革。地球と人びとの未来を創る。」

公式サイト:https://www.nanbu.co.jp/