職場環境最優良法人2024
【回答者数101人以上500人以下部門】
株式会社ナレッジワークさま

ドクタートラストのストレスチェックサービスでは、集団分析結果をもとに、職場の雰囲気を数値化した独自指標「TRUSTY SCORE」(職場環境指数)を算出、上位法人を職場環境優良法人として表彰しています。
今回は、2024年度のストレスチェックで、職場環境優良法人(回答者数101人以上500人以下部門)1位を受賞した株式会社ナレッジワークさまの高野葉子さま(PR)、野本篤則さま(HR)に組織内でのメンタルヘルス対策やコミュニケーションの活性化への取り組みについて伺いました。
聞き手:倉科彩香(ストレスチェック研究所 シニアコンサルタント)

ミッション「できる喜び」と3つの行動指針「スタイル」
本日はありがとうございます。まず、ナレッジワークさまの社風や特徴を教えてください
野本さま:
社風としては、大きく2つの特徴があります。ひとつはミッションへの共感が非常に高いこと。もうひとつは私たちが「スタイル」と呼ぶ行動基準や価値観が社内に浸透し、皆が体現していることです。
ミッションには「LIFE WITH ENABLEMENT できる喜びが巡る日々を届ける」を掲げています。昨日できなかったことが今日できるようになる、今日うまく進められなかった仕事も明日は進められるかもしれない――このような日々を届けたいという意図が込められています。
この「できるようになる」ことを私たちは「イネーブルメント」と呼び、それを実現するためのセールスイネーブルメントAIを開発し、お客さまに提供するのが当社の事業です。
新たに入社した人と面談をすると、それぞれが「自分が成長した原体験」や「もがき苦しんだ体験」を通して、何かを成し遂げることの重要さや尊さを自分の言葉で語ってくれるのが印象的です。ミッションに対して表面的に共感するのではなく、自身の原体験と結びつけて向き合っている方が多い会社といえます。
皆さん、大きさは違えども、何らかの困難を乗り越えたり、自分でできるようになったりした体験をお持ちの方が多い、というイメージでしょうか
野本さま:
そうですね。興味深かったのが、この春に入社した新卒社員です。「できる喜び」というと、働くうえでの体験と思いがちですが、彼らも学生時代の勉強など、自身の経験をミッションに落としこみ、それぞれの言葉で語ってくれました。
2つ目の「スタイル」についても、詳しく教えてください
野本さま:
「スタイル」として3つ掲げています。1つ目が「Act for People(人のために)」、2つ目が「Be true(誠実に )」、そして3つ目が「Craftsmanship(こだわりを持って)」です。
「Act for People」が指す「人」には、さまざまな対象があります。お客さまへの価値提供はもちろん、マクロな視点では「社会にとっての自分たちの意義は何か」、ミクロな視点では「隣で働くメンバーにとって自分の行動は本当にこれでよいのか」を考えることにつながります。
さらに、もっと個人的なこととして捉えると、家族や自分のワークスタイルにもかかわってきます。
お互いの立場を尊重しながら働ける環境が用意されていると言えそうです
野本さま:
そのうえでポイントになってくるのが2つ目の「Be true」です。ここでの「誠実」とは、「相手を慮りすぎて言いたいことが言えない関係」を決して望んでいるわけではありません。
誠実かつ忌憚なく意見を出すこと、それを受け止めてどう思ったかを相手に伝える、双方向で向き合う関係性を前提にしています。
気を遣って言いづらい、ということがないようにしているのですね
野本さま:
むしろ、発信することが「会社にとって、皆にとってよいこと」というカルチャーがあります。経営陣も意見や提案、質問はいつでも受け付けていますし、Slackなどにもそうした場を設けています。
高野さま:
私は数ヶ月前に入社したのですが、全社会議などで質問シートがあっという間に埋まっていく様子を目の当たりにして、「意見や質問を言ってもいい土壌が育っている」と圧倒されました。

野本さま:
経営陣は、質問が来たら必ず回答することを信条としています。
また、「Act for People」「Be true」だけですと、和気あいあいとした印象かもしれませんが、ここに最後の「Craftsmanship」がスパイスとして効いてきます。
当社は高いミッションを掲げるベンチャー企業ですので、しっかり成果を創出すること、そしてその過程やアウトプットの質を高めることには、かなりこだわりを持って取り組んでいます。
感情を共有し、感謝を伝え合う文化
そうした価値基準のもと、コミュニケーションで大切にされていることや、盛り上げるための取り組みがあれば教えてください
高野さま:
ナレッジワークは、コロナ禍の2020年4月に創業したため、当初からフルリモートでの業務を余儀なくされていました。そのなかでも、コミュニケーションが滞らないよう、3カ月に1回のキックオフ「Quarterly Session」や、月末の振り返り会「Monthly Session」といった施策を上手に設計してきました。
また「Emotion Line」といって、個々人の感情の変化を共有する機会もあります。
仕事の成果ではなく、感情を共有する場なのですか?
高野さま:
そうです。一人ひとりがどのような気持ちで働いていたのかを折れ線グラフで示し、業務にも関連付けることで、「このとき、本当はこういう気持ちだったんだね」と理解したり、はたまた「本当にお疲れさま、ありがとう」と伝え合ったり、コミュニケーションの促進に貢献しています。
このほか特徴的なのが、週次の「Thanks Card」です。これは、Slackの専用チャンネルで、先ほど3つの「スタイル」に沿って感謝のメッセージを送り合うものです。スレッドがずらっと並ぶほど、本当に多くの感謝が飛び交っています。
皆が主体的に投稿し、「Act for People」「Be true」などのオリジナル絵文字でリアクションしています。

お話をお聞きしていると、「気持ち」を大切にされている感じが伝わってきます
高野さま:
あともう一つ、 24時間以内に起こった良いことや新しいことを共有する「Good&New」もあります。
野本さま:
「Good&New」には2つの側面があります。
ひとつは、その人の内面や感情を知れること。もうひとつは、日常を振り返る機会になることです。
当社はそもそもスタートアップ企業ということもあり、他の企業と比較して業務の密度が高く、プレッシャーの大きい状況に置かれやすいという特性があります。
社員の多くは、そうした成長環境を求めて入社してきてくださっていますが、その中で一人ひとりが高いパフォーマンスを発揮できるよう、エンゲージメントの向上やストレスケアを重視しています。
プレッシャーの大きい環境では、目の前の業務に集中するあまり、日々の出来事に対する視野が狭くなりがちです。だからこそ、日常の出来事を前向きに捉え直す機会を設けることは、社員が健やかに、意欲的に働くうえで非常に重要だと考えています。
迷わずに済むという点が、安心感につながりますね
「仕事の話をしない1on1」で個人の状態に向き合う
前向きな取り組みとは表裏一体かと思いますが、メンタル面についてはどのような施策を打っていますか?
野本さま:
前提として、当社では上長と1on1を実施していますが、「仕事の話は絶対にしない」というルールを設けています。
仕事の話はしないのですか⁉
野本さま:
はい。1on1は、あくまでその人のモチベーションや能力に焦点を当てて1週間を振り返り、「どんな気づきがあったか、つらいことはなかったか?」といった話をします。
ここで不調の予兆が見えた場合は、上長から事業部所属のHR担当(HRBP)に相談が入るなど、情報をキャッチアップします。上長が部下たちの悩みを1人で抱え込まないよう、HRとしても間口を広くさまざまな受け皿を用意し、アサインの変更や業務ペースのチューニングなどを含めた検討・ケアをする体制を構築しています。
高野さま:
HRBPのメンバーはケアが手厚く、現場の解像度が非常に高いです。
野本さま:
解像度が高い理由はシンプルで、日頃から密なコミュニケーションを行っているためです。メンバーと1on1をするHRBPもいれば、マネージャーから話を聞くHRBPもいます。
特に入社直後の環境適応が大変な時期には、頻度高く1on1をしています。こうした設計で、HRBPが現場に常にアンテナを張れる状態にして、「何あったら、あの人たちがいる」という安心感を作っているのです。
野本さま:
メンタルヘルスとかコミュニケーションに関連して、「Act for People」には経営判断における優先順位が定められています。
顧客も自分の家族もすべて等しく大事なわけですが、あえて優先順位をつけるとしたら、1番目が「自分の健康」、2番目が「プライベートや家族との生活」、3番目が「ナレッジワークという会社組織」4番目が「お客さま」、そして「売上や業績」は最後にきます。
このことがきちんと定義、明文化されているのは安心材料のひとつですし、コミュニケーションの拠り所になっています。

ありがとうございます。今回インタビューのきっかけにもなった、ストレスチェックの集団分析結果はいかがでしたか?
野本さま:
もともと社内で実施しているエンゲージメントサーベイで、かなり高い結果は得られていました。
今回、ストレスチェックで良好な集団分析結果を得られたことで、客観的に見ても組織コンディションが良好な状態であると確認できたのは、本当に良かったです。
社員の健康を最優先に、組織拡大フェーズへ
今後、コミュニケーション面で取り組んでいきたいことなどがあれば教えてください
高野さま:
当社は今後、規模が急速に拡大するフェーズに差し掛かります。そのなかでも、コミュニケーション施策に関する定性的かつ定量的な一次情報を社員から集めるプロセスをより重視したいと考えています。
具体的には、オフィスの移転計画を進めていますが、まずは今の社員が何を考え、何に困っているのかに耳を傾けるステップをしっかり挟んでいこうとしています。
施策も組織の変化に合わせてチューニングを行っていますが、さらにメンテナンスをしていきたいです。


株式会社ナレッジワーク
2020年4月創業。「LIFE WITH ENABLEMENT できる喜びが巡る日々を届ける」をミッションに掲げ、働く人たちのイネーブルメント(成果の創出や能力の向上)を支援するスタートアップ。働く人たちにイネーブルメントを届け、プロダクトを通じて優れたワークエクスペリエンス(業務体験)を実現するため、主に大手企業を対象に営業支援およびセールスイネーブルメントAI「ナレッジワーク」を中心に開発・提供している。
撮影場所:WeWork 神谷町トラストタワー