職場環境最優良法人2024
【回答者数1,001人以上部門】
福島県警察さま

ドクタートラストのストレスチェックサービスでは、集団分析結果をもとに、職場の雰囲気を数値化した独自指標「TRUSTY SCORE」(職場環境指数)を算出、上位法人を職場環境優良法人として表彰しています。
今回は、2024年度のストレスチェックにおいて、職場環境優良法人(1,001人以上部門)1位を2年連続受賞した福島県警察の鈴木桂子さま(警務部厚生課健康管理室長)、橋本竜平さま(警務部警務課調査官兼次席兼警務部監察官)、酒井はる奈さま(警務部厚生課健康管理第二係保健技師)に警務課と厚生課の連携など、さまざまな取り組みについてお話を伺いました。
※2023年度の記事はこちら
聞き手:根本裕美子(ストレスチェック研究所 保健師)

警察組織におけるワークライフバランスと心理的安全性向上の取り組み
「職場環境優良法人」2年連続の受賞、おめでとうございます。
本日は、ストレスチェックを担当されている厚生課から鈴木さま、酒井さま、それに警務課から橋本さまにお話を伺います。初歩的なところで恐縮なのですが「警務課」と「厚生課」の役割の違いについて教えていただけますでしょうか
橋本さま:
はい。まず、警務課、厚生課が属する警務部は、警察組織の基盤強化を大きな目標と掲げている部署です。
このうち警務課は、具体的には人事や給与、勤務制度の合理化・効率化、ワークライフバランスの推進といった運営一般、いわば警察組織の「組織基盤」と「人的基盤」を担っています。
鈴木さま:
それに対して厚生課は、職員の健康管理、福利厚生や生活相談などを担当しています。

「警務課」の業務についてもう少し詳しく伺えますか
橋本さま:
警務課では、先ほど少し触れたワークライフバランスの推奨と実現に重点を置いています。具体的には、年次有給休暇や夏季休暇といった休暇の取得推進があります。
あとは男性職員を含めた育児休業の取得促進などを取り組みとして進めているところです。
思った以上に、しっかりと「休暇」を取るように働きかけているのですね
橋本さま:
警察の仕事には、一般的にハードなイメージがあるかもしれません。実際に厳しい現場はあるものの、仕事に一生懸命取り組むうえでは、プライベートの充実も不可欠だと考えています。
つまり、プライベートを充実させることが、仕事の質を高めることにつながるわけです。
まさに「ワーク・エンゲイジメント」の考え方を実践されているといえそうです
橋本さま:
休暇の取得しやすさは、職場内での上司、部下の間での会話のしやすさやコミュニケーションの円滑化、ひいては「心理的安全性」の確保に関わってくるのではないでしょうか。
実際、ストレスチェックで良好な集団分析結果が出た背景にも、こうした点が多分に影響していると考えています。
警務課と厚生課の連携による働き方改革と職場環境改善の取り組み
警務課と厚生課ではお話しくださったように職掌が分かれていますが、両課で連携を取る場面もありますか
鈴木さま:
はい。ワークライフバランスの実現や、総合的な福利厚生施策を推進するために連携しています。
具体例としては、男性職員の育児休業の取得ですとか、仕事と子育、介護、それに本人の治療などとの両立支援が挙げられます。
また、病気などで休職している職員がスムーズに職場復帰できるよう、情報交換なども行っています。
このほか、長時間労働によって健康被害が出ないよう、超過勤務が過剰にならないための組織作りや、休暇を取得しやすい環境整備についても連携しています。
やむを得ず長時間勤務となった職員に対して、医師の面接指導をするとか、そういったところは警務課と厚生課が連携している部分です。
ここまでさまざまお話しいただいた先駆的なお取り組みは、外部から取り入れているのでしょうか、組織内から生まれてくるものなのでしょうか
橋本さま:
外部のよい事例を参考にしつつ、県警独自の取り組みも進めています。
一つの転機となったのが、2017年1月に、当時の本部長が打ち出した「ワークライフバランス本気宣言」です。
これは、公私ともに充実できる職場環境をトップ自らが本気で実現していくという宣言で、いま思い返すと、ここから組織の意識が大きく変わったように感じています。

このほかに「連携」で特徴的なお取り組みはありますか
橋本さま:
女性職員の職場復帰支援が挙げられます。産休・育休で数年間休んだ職員が復帰する際、休職前と組織の制度が変わっていることがあります。
こうした不安を解消するためのセミナーを現場で実施していますが、現場だけではカバーしきれない部分もあり、厚生課と連携してサポートしています。
また、健康障害の防止も重要な連携分野です。
超過勤務の削減や休暇取得の推進は警務課の担当ですが、職員の健康に直結する課題ですので、厚生課と常に情報共有し、連携を図っています。
鈴木さま:
法律で定められている、長時間労働者に対する医師の面談などは、厚生課の業務として実施しているところです。
これに対して、警務課が担当する超過勤務の削減は、単純に「時間を減らせ」という指示だけではありません。業務の合理化・効率化を伴う、より大きな視点での取り組みになります。
組織全体として超過勤務を減らす施策を警務課さんが行い、それでも長時間勤務となった方を厚生課さんがサポートする、というように、抜け漏れのない体制が構築されているという印象です
あえて「共有しない」ことで安心して相談してもらえるように
鈴木さま:
ほかにも警務課、厚生課がそれぞれ相談窓口を設け、職員が相談しやすい方法を選べるようにしています。
相談を受けた内容は、双方で共有されているのでしょうか
鈴木さま:
いえ、相談内容は組織内で共有しないほうが職員も相談しやすいと考えています。そのため、原則として情報は共有しません。
もし「この相談は窓口が違う」となった場合には担当課へつなぐこともありますが、その際も必ず本人の承諾を得ています。相談したことで職員が新たな悩みを抱えることのないよう、「あなたの相談内容は守られます」というスタンスを貫いています。
確かに「相談したことやその内容」が本人の承諾なく周りに伝わらないのは大きな安心感です
職員全体での健康への意識を高める
酒井さまは昨年、福島県警察に入職されたと伺いました。以前は別の領域で保健師として活動されていたそうですが、福島県警察の取り組みについて感じたことはありますか
酒井さま:
私は福島県警察に入職して今年で2年目に入りました。
入職して感じたのは、職員の健康意識を醸成するためのセミナーや健康相談の機会など、取り組みが非常に多いことです。
たとえば、ストレスチェックの集団分析結果の解説と合わせた「メンタルヘルスセミナー」のほかにも、育児中の職員と上司を対象にした「育児メンタル支援セミナー」、女性特有の健康課題に関するセミナー、男性職員向けの健康セミナーなど、対象者ごとに外部講師を招いて複数のセミナーを開催しています。
また、保健師が県内すべての警察署を巡回して健康教育を実施しており、健康に関する手厚い取り組みに驚きました。

職員の皆さまも健康への意識が高いのでしょうか
酒井さま:
はい、その点は強く感じます。想像していた以上に職員の健康意識は高いです。
また、所属全体でセミナーに参加させようという積極的な姿勢もあり、組織としての意識の高さも感じています。
今のお話ですと、保健師の方は県警本部に在籍し、必要に応じて県内の各警察署に行かれるのですね
鈴木さま:
各警察署に保健師は常駐していません。所属の人数に応じて、健康管理委員会が産業医の先生を委嘱しており、相談できる体制は整っています。
しかし、やはり相談しやすいのは警察本部の保健師のようで、よく電話で相談が寄せられています。
組織の事情をよく理解しているという点が大きいのかもしれません。

手厚いセミナーを実施されているとのことですが、こうしたお取り組みは、他の都道府県警と情報交換した上で導入されるのでしょうか。それとも、福島県警察が独自に企画されているのでしょうか
酒井さま:
独自の取り組みもありますし、外部の情報を参考にしている部分もあります。警察として学会へ積極的に参加する方針があり、そこで得た世の中の先進的な取り組みを保健師が中心となって導入しています。また、他の都道府県警の取り組みを参考にすることもあります。
職員の健康は組織の宝
今日はさまざまなお話をありがとうございました
鈴木さま:
職員一人ひとりが能力を最大限に発揮できれば、組織の士気も上がり、県民の皆さまの安全・安心につながります。
そのために、健康管理は非常に重要です。わたしたちは「職員の健康は組織の宝である」という気持ちで、日々の業務に取り組んでいます。

福島県警察
福島県内を管轄区域とする警察組織。
「福島を支える力強い警察」を基本姿勢に、福島県内において犯罪捜査や交通指導の取締り、犯罪抑止活動等の各種警察活動に従事している。