職場環境最優良法人2025

【回答者数1,001人以上部門】
大阪市消防局さま

ドクタートラストのストレスチェックサービスでは、集団分析結果をもとに職場の雰囲気を数値化した独自指標「TRUSTY SCORE」(職場環境指数)を算出、上位法人を職場環境最優良法人として表彰しています。
今回は、2025年ストレスチェックにおいて、職場環境優良法人(回答者数1,001人以上部門)を受賞した大阪市消防局の人事課のみなさまに、約3,700人の職員が働く組織のメンタルヘルス対策やコミュニケーション活性化への取り組みについてお話を伺いました。

※お話を伺った方:池側智一さま(人事課長)、中川泰輔さま(人事課厚生担当副課長)、下野紀子さま(担当係長・厚生)、津田勝弘さま(担当係長・人事)、八柄堅一さま(担当係長・採用対策)、上嶋恵大さま(人事課・厚生)、岩脇千晴さま(人事課・厚生)

お役職はそれぞれ2026年3月取材時のものです

聞き手:髙木弘和(ストレスチェック研究所)

命を預け合う仲間との絆——関西気質が育む職場の風土

まず、大阪市消防局さまの組織風土や雰囲気について教えていただけますか

中川さま:

関西ということもあって、明るい職員が多いと感じています。サービス精神旺盛といいますか、場を盛り上げようとする雰囲気が自然と生まれやすい組織です。
また、職員の約8割が24時間勤務体制で、いわゆる「同じ釜の飯を食う」仲間として日々をともにしています。災害現場ではお互いの命を預け合う関係になりますから、職員同士のつながりや絆が自然と強くなるのが、大阪市消防局の特徴だと思っています。

「命を預け合う」という言葉が印象的です。職員数はどのくらいになるのでしょうか

中川さま:

約3,700人がいまして、約3,400人が25の消防署に分かれて勤務しており、残り300人ほどが本部などで勤務となります。

3,700人という規模で、そうした絆が育まれているのはすごいことですね。最近、職員の意識に変化はありますか

中川さま:

仕事もプライベートも大切にしたいという職員が増えてきました。年齢層に関係なく、そうした考え方が広まっています。以前とくらべると、働き方への意識が大きく変わってきたと感じています。組織としても、そうした職員を後押しし、支えていきたいと思っています。

7名の看護師が支える、重層的なメンタルヘルス体制

ありがとうございます。続いて、メンタルヘルス対策やコミュニケーション活性化について、具体的な取り組みを教えてください

下野さま:

メンタルヘルスのサポートについては、現在、看護師が7名在籍しています。
全消防署25署を定期的に巡回し、各消防署に配置された産業医のサポートのもと、心の悩みを抱えた職員との個別面談を行っています。面談の中で、さらなるケアが必要と判断された場合は、消防局の産業医や公認心理師へとつなぐ体制を整えています。

看護師が7名常勤というのは、正直かなり驚きました。なかなかここまで充実しているところは多くないと思います

下野さま:

ありがたいことに、そのようにおっしゃっていただくことが多いです。この体制は昔から続いてきたもので、組織としてそれだけ職員の健康を大切にしてきた歴史の表れだと思っています。職員にとっても、専門職がそばにいるという安心感は大きいのではないでしょうか。

メンタルヘルス以外でも、コミュニケーション活性化の取り組みはされていますか

下野さま:

消防局では福利厚生の親睦会(会員約3,400人)によるスポーツ大会を年6回ほど開催しています。若い職員からベテランまで一緒に汗を流すことで、職場を越えた交流が生まれています。消防という仕事柄、同じ消防署の仲間とは密な関係が築きやすい反面、他の消防署の職員とはなかなか接点がありません。こうした場を通じて、組織全体のつながりを育てることを意識しています。
また、各消防署では「活力ある職場推進チーム」が設けられており、所属ごとにオリジナルの取り組みを行っています。挨拶運動、交通事故防止の標語作り、ハラスメント防止川柳の募集など、それぞれのカラーで工夫してくれています。

上嶋さま:

人事課では、ホッと一息つく給湯場所に、職員の顔写真に2カ月に1回テーマを変えてコメントを添えたボードを掲示しています。好きな食べ物や趣味など、業務では知る機会のない一面が見えることで、そこから自然と会話が生まれるきっかけになっています。「この人、こんな趣味があったんだ」という小さな発見が、職場の雰囲気を柔らかくしてくれていると感じています。

いいですね。雑談のきっかけって、意外と意図的に作らないと生まれないですよね

新入職員もベテランも——階級に応じた面談・研修体制

個別の面談についても取り組まれているとのことでしたが、もう少し詳しく教えていただけますか

上嶋さま:

新入職員は、採用から1年が経過した段階で、看護師による個別面談を全員に実施しています。1年間でどのような気持ちの変化があったかを丁寧に確認し、気になる職員がいれば消防局に報告のうえ、必要に応じて公認心理師へつなぐようにしています。
入職直後は緊張や不安を抱えていても、なかなか自分から声を上げられないことがあります。この面談を通じて、そうした職員の変化に早めに気づくことが目的です。
また、119番通報を受ける指令情報センターに新任配置された職員についても、個別面談を行っています。多様な電話対応が続く業務はストレスが大きいため、配属後のケアを特に意識しています。新入職員の採用は半年ごとにありますので、面談の機会も定期的に確保できています。

指令情報センターというと、想像するだけでもプレッシャーのかかる職場ですね。そこへの配慮があるのは心強いと思います。研修体制についても教えてください

下野さま:

消防という職務柄、厳しい指導が必要な場面は避けられません。ただ、「指導」と「ハラスメント」の境界線については、繰り返し丁寧に伝えることが重要だと考えています。管理監督者向けの研修をはじめ、勤続年数や階級が上がるごとに段階的に実施しており、その内容にはセルフケアも含まれています。日頃のコミュニケーションの積み重ねが、厳しい現場での信頼関係の基盤になると思っています。

リクルーター制度から生まれた、男性版グループメンター

新しい取り組みとして、リクルーター制度とグループメンターについて教えてください

八柄さま:

2025年10月から、リクルーター制度の試行運用を開始しております。本制度は、消防署からリクルーターを選任し、人事課と連携しながら採用広報活動を行う仕組みです。現場職員が学生などに直接「生の声」を届けることで、より実態に即した職場の魅力を伝えることができるとともに、リクルーター自身のモチベーションやエンゲージメント向上も期待しております。

さらに、リクルーター制度の中で、「新任配置者向けグループメンター」を開催し、リクルーターが新任配置者のメンターの役割を担う取組も開始しました。
大阪市消防局では2015年から女性消防職員向けメンター制度を導入しておりますが、今回始まった「新任配置者向けグループメンター」は、消防署に配属された新任配置者とリクルーターが「顔の見える関係」を早期に構築することにより、キャリア形成の支援を含めた「気軽に相談できる体制の構築」を図るものです。

女性消防職員向けのメンター制度が2015年からというのも、かなり先駆的な取り組みですね。新任配置者向けグループメンターを導入しようと思ったのはどういった背景からでしょうか

八柄さま:

女性消防職員向けメンター制度については、当時は女性消防職員が現在よりも少なかったことを踏まえ、他署の女性消防職員とつながり、相談体制を構築することで、キャリア形成に向けた課題解決やワークライフバランスの実現を支援することを目的としており、今後も継続していく取組となります。
新たに取組を開始した新任配置者向けグループメンターについては、消防学校卒業後の新任配置者に対するサポート体制の強化を目的としています。消防学校を卒業した職員の大半は、消防署に配属され24時間勤務に従事し、災害現場対応を担うこととなります。日常業務においては、他の消防署の職員と交流する機会は限られており、私自身を振り返りましても、消防署に配属された当時、他署の職員とのつながりはほとんどありませんでした。
新任配置者が配属後早期にリクルーターと「顔の見える関係」を構築することで、従来以上に心理的安全性が確保されるとともに、今後の消防人生における人脈形成の端緒となることを期待しております。
なお、試行運用においてはオンラインでグループメンターを実施しましたが、参加者からの意見などを踏まえ、本運用では対面での開催を検討しているところです。

この取り組みは大阪市消防局独自のものでしょうか

八柄さま:

リクルーター制度については、すでに導入している消防本部もありますが、新任配置者向けグループメンターを導入している他の消防本部については、現時点では把握しておりません。
今後は、参加者からの意見等を踏まえつつ取組内容を継続的に改善し、本取組が他の消防本部にも広がることを期待しております。

全消防署に届ける——説明資料と現場主義のストレスチェック活用

続いて、ストレスチェックの集団分析結果の活用についてお聞かせください

中川さま:

ストレスチェック集団分析の結果は偏差値で数値化されているので、他の組織や前年との比較がしやすく、パッと見てわかりやすいという印象があります。
こうした結果を活かして職場環境を改善していきたいという意欲は、各消防署でも強く感じます。分析をもとに、数値が悪い部分を改善するだけでなく、良い部分を維持・伸ばしていくことも大切だと考えています。制度がスタートして以来、少しずつ活用の仕方をブラッシュアップしてきた実感があります。

各消防署への展開はどのようにされているのでしょうか

岩脇さま:

集団分析の結果を各消防署に展開する際には、担当者向けの説明資料を作成しています。どこを重点的に見てほしいか、どのような改善策を検討してほしいかを盛り込んだ資料を作り、消防署単位・勤務形態別のデータとあわせて送付しています。
毎日勤務と隔日勤務の職員(※)ではストレスの傾向も異なるため、それぞれの状況に合わせた内容で展開するよう心がけています。
各消防署では、受け取ったデータをもとに安全衛生委員会で議題にしていただいており、どう取り組むかを消防署ごとに計画として出してもらっています。


毎日勤務:週休2日制で勤務を行う職員。消防局や消防署において総務業務、予防業務、警防業務の事務などを担当している
隔日勤務:24時間体制で勤務を行う職員。消火隊や救急隊、救助隊など災害対応を担当している

声が上げやすい組織へ——若手の意識に生まれた変化

組織として、職員が声を上げやすい環境づくりについてはいかがでしょうか

下野さま:

以前とくらべると、若手職員が自分の意見や気づきを発言しやすくなってきたと感じています。
職場改善についても、現場から積極的に声が上がるようになりました。受け止める側としては身が引き締まる思いもありますが、それだけ職員が組織に対して前向きに関わってくれているということだと捉えています。

中川さま:

意見を言いやすい雰囲気があってこそ、職場の問題も早期に把握できます。上からの指示を待つだけでなく、現場の職員が自ら課題を提起してくれる組織でありたいと思っています。

採用・育休・ジョブローテーション——働き方改革の最前線

最後に、今後の組織づくりについての展望をお聞かせください

津田さま:

当局では、さまざまな消防業務を幅広く経験するため、ジョブローテーションを重視し、とくに若年層職員については重点的に育成することとしています。
以前とくらべると、消防署においても積極的にジョブローテーションが行われ、若年層職員が幅広い消防業務や習得した基礎スキルをもとに次のステップに向け大きく成長していくため、今までのキャリアを振り返り、自身の強みや弱みを把握・整理し、 自己理解を深めながら組織に求められる役割を理解し、自身の将来に向けての方向性を考えていくことが組織全体の底上げにつながると考えています。

消防というと、資格や専門性が細かく分かれているイメージがあったので、ジョブローテーションを積極的に進められているというのは意外でもありました。

中川さま:

ワークライフバランスの推進も重要な課題です。男性職員の育児休業取得についても組織として積極的に進めていきたいのですが、24時間勤務体制では、一人が急に休むと誰かが代わりに出てこなければならない構造があります。休みを取りやすくするための人員確保が、採用対策とも直結した今後の大きな課題です。
日頃のコミュニケーションの積み重ねが、いざという時の助け合いにつながる。思いやりを持って指導できる職員が増えていくよう、これからも働きかけていき、職場の心理的安全性が保たれることで、今後のよりよい消防活動につながると考えております。

大阪市消防局さま、ありがとうございました!

大阪市消防局

大阪市内と大阪港を管轄区域とする消防機関。約3,700人の職員が大阪市消防局本部および25消防署に勤務し、市民の生命・身体・財産を守るため、昼夜を問わず消防・救急活動にあたっている。

公式サイト:https://www.city.osaka.lg.jp/shobo/